節税
このところ制度改悪の続く「ふるさと納税」ですが、6月28日に総務省より告知された新たな見直しが話題を集めています。
その見直しとは、『寄付者に対しポイント等を付与するポータルサイト等を通じた寄付募集を禁止』するというもので、令和7年10月からの実施予定です。
総務省は、『ポータルサイト等による寄付に伴うポイント付与に係る競争が過熱』を解消するためと説明しますが、果たして世間にはどのように受け止められたのでしょうか?
本稿では、今回告知されたふるさと納税の見直し内容をおさらいしつつ、今後の影響について説明したいと思います。
まずは、総務省の告知した見直し内容を詳しく見てみましょう。
著者が気になったのは、今回禁止された「ポイント付与の範囲」です。
告知内容からは、「楽天市場」「ふるさとチョイス」等のポータルサイトで、ふるさと納税の対象となる寄付をした際に付与される「楽天ポイント」「PayPayポイント」等が該当するように読めます。
しかし、実際の地方税法の改正文言や、総務省が同日付で公表したQAによれば、影響範囲はより広範であり、どうやらポイントサイトやクレジットカード利用に伴う追加ポイント付与(通常のポイント付与は対象外)に至るまで、幅広いポイントがその制限対象となるようです。
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<総務省によるQAからの抜粋>
・また、いわゆるポイントサイト等を経由してポータルサイトに遷移し寄附を行った際に当該寄附に伴って付与されるポイント等については、当該ポータルサイトの運営事業者等により直接寄附者に対して付与されるものでなくても、寄附に相当程度関連するものであると考えられることから、「第一号寄附金の寄附に伴って寄附者に対し金銭その他の経済的利益」に該当する。
(告示第2条第1号ロ⑵の「第一号寄附金の寄附に伴って寄附者に対し」提供される「金銭その他の経済的利益(第一号寄附金に係る決済に伴って提供されるものであって、通常の商取引に係る決済に伴って提供されるものに相当するものを除く。)」に該当すると考えられる例)
・ポータルサイト運営事業者等が寄附者に対して、寄附に付随して付与するポイント等
・いわゆるポイントサイト等を経由してポータルサイトに遷移し寄附を行った際にポイントを付与する当該寄附に付随して付与されるポイント等
・クレジット会社やキャッシュレス決済事業者等が、寄附に係る決済に付随して付与するポイント等のうち、ふるさと納税に係る寄附に係る決済を対象として追加的に付与されるもの及びふるさと納税以外のサービス等の利用状況等に応じて追加的に付与されるもの
【出典】総務省ホームページ『ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&A(令和6年総税市第65号)PDF』より抜粋
https://www.soumu.go.jp/main_content/000955668.pdf
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では、今回の見直しを受けて世間の反応はどうだったのでしょうか?
著者が確認した範囲での賛成派の意見は、
・ふるさと納税の主旨(地方自治体の応援)からすれば、ポイント付与どころか、本来は返礼品さえ不要なので当たり前の措置である
・寄付行為に対して、特定の民間企業だけが利益を上げる構図は不公平であり、今回の見直しは評価できる
といった声が多いようです。
逆に、反対派の意見としては、
・お得感が更に薄れてしまい、ふるさと納税をする意欲をなくしてしまう
・政治家の裏金やマイナポイントのばら撒きはよいのに、なぜ数少ない国民の楽しみを奪うのか
といった声が目立つように感じます。
どちらも納得のいく意見ではありますが、本稿では少し着眼点を変えて、
・そもそも、今回の見直しで誰が得をするのか?
という点について、今後の影響を考えていきたいと思います。
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冒頭でも触れましたが、今回の見直しの背景として、総務省は「ポイント付与競争の過熱」している点を挙げています。
しかし、著者としては、それであれば目的と手段が違うのではないかと感じます。
なぜなら、仮に自治体同士の競争過熱により、ポイント原資分の負担が重くなっている事実があったとしても、令和5年10月からはいわゆる「5割規制(※)」が実施されているため、自治体の負担は最大でも5割に抑えられているはずだからです。
(※)5割規制とは、
・・・返礼品の原価と全ての経費の合計を、寄付金額の5割以下とする規制
もし、最大5割の負担が重いのであれば、上限割合を見直すべき話ですし、ポイント原資の負担が5割規制の対象外であれば、対象とするよう改めるべき話です。
また、肝心なことは、今回の見直しによって、本当に自治体の経費負担が軽くなり、より地域応援に繋がるのかといった点ですが、それも現時点では怪しい雲行きです。
たとえば、楽天グループの代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏によると、楽天を含むサイトでは、地方自治体に負担を求めないポイント等のプロモーションを実施してきたとのこと。
民間原資のポイントと混同しているとして、撤回のネット署名まで発展する事態となっています。
一部ポイントの原資は元々民間が負担していたとすれば、思ったほどにポイント原資分の経費負担は軽くならない可能性があります。
また、仮に負担が減ったとしても、軽減分は5割規制の範囲内で返礼品の原価に回ることが予想されますから、自治体の実質的な負担はほとんど変わらない可能性は十分に考えられるところです。
その一方、民間原資でのプロモーションがなくなることで、利用者のふるさと納税への意欲が盛り下がり、自治体に集まる寄付金額が減少する可能性も考えられます。
自治体の経費負担は実質的に変わらないのに、「ふるさと納税の寄付金が減り、自治体も、利用者も、事業者も、みんなが残念な結果になった・・・」という最悪な結果になったりしないか?と老婆心ながら不安に感じてしまうところです。
総務省には、撤回はできないとしても、せめてより丁寧な説明を期待したいですね。
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