節税
控除制度を利用すると税金の負担を軽減することができますが、控除には「所得控除」と「税額控除」の2種類があります。
所得控除は全15種類あり、所得金額から一定額を差し引く制度で配偶者控除や扶養控除、医療費控除などがあります。
一方、税額控除は納める税金そのものから一定額を差し引くことができ、住宅ローン控除や外国税額控除などがあります。
簡単に言えば、所得控除は所得を小さくし、かかる税金を抑えるもの、税額控除は納める税金自体を小さくするものになり、それぞれ控除のタイミングが異なります。
今回はその中で、所得控除の一つである生命保険料控除について、概要や申請方法、適用を受ける際の注意点を見ていきましょう。
【INDEX】 ■生命保険料控除とは ■申請方法や注意点について ■最後に |
生命保険料控除とは、契約している生命保険などの払込み保険料に応じて、金額の一部を所得から控除できる制度です。
生命保険料控除により所得から一定金額を差し引けるため、所得税・住民税を軽減することができます。
生命保険料控除には、以下3つの種類があります。
控除の種類 |
保障内容 |
対象となる保険商品 |
一般生命保険料控除 |
生存または死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険商品 |
定期保険、収入保障保険、終身保険、養老保険、学資保険など |
介護医療保険料控除 |
ケガや疾病、身体の障害などにより給付金が支払われる保険商品 |
介護保険、医療保険、がん保険、就業不能保険など |
個人年金保険料控除 |
個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金保険など |
個人年金保険など |
※介護医療保険料控除は新制度のみ
控除額については、平成23年12月31日までに契約した生命保険に適用される「旧制度」と、平成24年1月1日以降に契約、更新などをした生命保険に適用される「新制度」で計算方法や限度額が異なります。
■新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額
【所得税】
年間の支払保険料等 |
控除額 |
20,000円以下 |
支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 |
支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 |
支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 |
一律40,000円 |
【住民税】
年間の支払保険料等 |
控除額 |
12,000円以下 |
支払保険料等の全額 |
12,000円超 32,000円以下 |
支払保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 |
支払保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超 |
一律28,000円 |
■旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額
【所得税】
年間の支払保険料等 |
控除額 |
25,000円以下 |
支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 |
支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 |
支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 |
一律50,000円 |
【住民税】
年間の支払保険料等 |
控除額 |
15,000円以下 |
支払保険料等の全額 |
15,000円超 40,000円以下 |
支払保険料等×1/2+7,500円 |
40,000円超 70,000円以下 |
支払保険料等×1/4+17,500円 |
70,000円超 |
一律35,000円 |
旧制度においては介護医療保険料控除の区分がないため、一般生命保険料控除の対象となります。
自分が加入している保険商品の区分が分からないときは、保険会社から送られてくる保険料控除証明書にて内容を確認しましょう。
生命保険に加入すると内容に応じた控除が受けられますが、自動的に申請され税金が返ってくる訳ではありません。
別途、控除を受けるための手続きが必要となります。
会社員や公務員などの給与所得者は、勤務先で年末調整を受ける際、給与所得者の保険料控除申告書に必要事項を記入し保険料控除証明書と一緒に提出します。
各保険会社から、一般的には10月頃に控除証明書が届きますので大切に保管しておきましょう。
一方、個人事業主やフリーランスの方は年末調整がないため確定申告が必要となります。
控除を受ける場合は確定申告の際に控除額を計算し、控除証明書を添付して申告します。確定申告は時期が決まっているため忘れずに申告しましょう。
また生命保険料控除を受ける際の注意点も確認しておきましょう。
■保険料控除証明書を紛失したら
控除証明書を紛失した場合は、保険会社に依頼して再発行が可能です。その際、証券番号や契約者名、登録住所などが必要になるため手元に準備しておきましょう。
■申告を忘れてしまったら
年末調整や確定申告で申告をしなかった場合は、再度確定申告(還付申告、更正の請求等)をして控除することが可能です。過去5年以内であれば遡っての申告ができますので、気付いたタイミングで内容を確認するようにしましょう。
■年末調整後の保険の見直し
一般的に年末調整は12月の給料の支払いで精算を完了するため、保険見直しのタイミングによっては保険会社からの控除証明書が間に合わず年末調整で考慮されない可能性があります。
そのような場合は自分で控除額を計算し、確定申告を行うことで保険料控除を受けることが可能です。
■個人年金保険料控除を受けるときの注意点
個人年金保険料控除を適用するには所定の条件を満たす必要があり、条件を満たさない場合は控除の適用となりません。
<条件>
・年金支払開始日における被保険者の年齢が60歳以上 ・年金支払期間が10年以上 |
また変額個人年金については、個人年金保険料控除ではなく一般生命保険料控除の対象となるため注意が必要です。
今回は、生命保険料控除についてお伝えしました。
こうした税金控除については、知っているとお得になる制度がたくさんありますが、基本的には自己申告が必要となります。
年末調整や確定申告で各種控除の申告を行わなかった場合、控除を受けられないことで総所得額が多くなってしまうため支払う税金も多くなります。できるだけ支払う税金を抑えたい人は、必ず各種控除の申請・申告手続きを行うようにしましょう。
また年末調整に関しては申告ミスや漏れがあると、最終的には自分で確定申告をしなければなりません。確定申告は計算が複雑になることも多く手間がかかるため、事前に必要書類の確認や記入ミスが無いよう十分注意して年末調整の申告を行うようにしましょう。
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