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働いたら負け!?住民税非課税世帯への給付金に不満爆発!?

働いたら負け!?住民税非課税世帯への給付金に不満爆発!?

働いたら負け!?住民税非課税世帯への給付金に不満爆発!?

先日、山際大志郎経済再生担当相から、昨今の物価高騰への対策として、早ければ11月にも住民税非課税世帯に対する5万円の給付金を支給開始できる旨の説明がありました。

給付金の予算規模は約8,500億円。このうち約500億円がコールセンターの設置費用や振込手数料・郵送代といった事務費に充てられるとのことです。

まだまだ物価高騰は収まる気配なく、10月には幅広い品目での一斉値上げがあったばかり。

嗜好品・贅沢品だけでなく、食品・日用品などの生活必需品や電力・ガスといった生活インフラにまで値上げが及んだことで、特に収入の低い世帯にとっては死活問題とされています。

そうした状況下で政府から発表された給付金ですが、早くも野党のみならず、多くの国民からもSNSなどを通じて厳しい反対の声が寄せられているようです。

国民を守るための給付金が、どうして批判される事態になってしまったのでしょうか?

本稿では、その背景・原因を考察していきたいと思います。

■反対理由に共通する「公正性」への不納得感!

まずは、著者が調べた範囲で特に目立つ反対意見をご紹介しておきましょう。

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<5万円給付に対する反対意見の例>

●住民税非課税世帯以外も物価高騰の影響は受けており、特定世帯への給付は不公平である

●給付金の支給は、いつも住民税非課税世帯ばかり。真面目に税金を納めている世帯は報われない

●そもそも、「住民税非課税世帯=低所得=生活困窮者」という認識も正しくない
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いずれの指摘も真っ当な意見ですよね。

これらに共通しているのは「公正性」に関する不納得感です。

物価高騰で生活が苦しいのは住民税非課税世帯に限りませんし、納税している世帯のなかにも、住民税非課税世帯と同様に(あるいはそれ以上に)、生活の苦しい世帯は少なからずあることでしょう。

しかしながら、現実問題として、それぞれの世帯ごとに生活実態を調査することは不可能です。

給付金の支給対象を絞るとなれば、なんらかの線引きは必要となりますし、線引きをする以上はどこかしらで不公平が生じることは避けられないのでしょう。

これを回避するとすれば、国民全員に一律で給付金を支給するしかありません。

■国民全員への一律支給には7倍以上の予算が必要!?

では、もし給付金を国民全員に一律支給する場合、どの程度の予算が必要になるのでしょうか。

参考となるのは、2020年に新型コロナウィルス感染拡大対策の一つとして実施された10万円の特別定額給付金です。

「基準日(令和2年4月27日)において、住民基本台帳に記録されている方」すべてに対して、1人当たり10万円が給付された制度で、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。

総務省によると、このときの予算規模は約12兆8,800億円(うち、事務費は1,458億円)で、約8,500億円とされる今回の15倍以上です。

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<参考>
総務省ホームページ
『特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連)』
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仮に、今回の給付金5万円を国民全員に一律支給にすると、単純計算で6~7兆円規模の予算が必要となり、これは現在の予算8,500億円の実に7倍以上に相当します。

こう考えてみると、国民全員に一律支給を行うことは相当に難しく、やはり何らかで支給する対象を線引きすることは止むを得ないといえそうです。

■「働いたら負け!」現役世代の方が生活は厳しいことも!?

では、給付金の支給には何らかの線引きが必要として、「住民税非課税世帯」がその基準として妥当であるのかについても考えてみましょう。

住民税非課税世帯とは、文字通り「住民税が課税されない世帯」です。

このように聞くと、「住民税が免除されるくらいだから、よほど生活の厳しい世帯なのだろう・・・」とイメージするかもしれませんが、先ほど紹介した反対意見にもあったとおり、必ずしもそうではありません。

理由はいくつかあるのですが、今回は主要な2つをご説明しましょう。

住民税の課税有無は、「前年の所得」によって決まりますが、「所得」は「収入」と同じではありません。

本旨と外れるため詳しい説明は避けますが、ある程度の税務会計の知識のある個人事業主や会社経営者にとって、「実質的に十分な収入を得ながら、前年の所得を抑える」ことは決して不可能ではないのです。(もちろん、合法的な手段において、です)

また、住民税の課税有無は、既に所有している資産とは無関係に決まります。

住民税非課税世帯には、公的年金を受給する高齢者世帯が多く含まれていますが、たとえばローンを終えた自宅を持っている世帯や十分な預貯金のある世帯であれば、前年の収入が少なかったとしても、必ずしも生活が厳しいとは限らないわけです。

その一方、まだ十分な資産を持たない若い世代では、毎年の生活費を会社員・公務員(パート・アルバイトを含む)などからの給与収入に頼るケースが多く、その収入を住民税非課税の水準まで下げることは困難です。(会社員・公務員などの給与収入では、前述した所得を下げる工夫の余地も非常に限られています)

自分や家族のために必死に働いても、所得税・住民税、さらには社会保険料までがっぽり徴求されてしまい、「働けど、働けど・・・」という世帯は決して少なくありません。

こうした実態を知る人からすれば、「住民税非課税世帯」を給付金の支給基準とすることに違和感を覚えることは当然ですし、「働いたら負け!」とさえ思ってしまうのかもしれません。

いかがでしょうか。

国民全員に給付金を一律支給するのは予算上難しいとしても、支給対象を線引きする基準には、公正性・納得感が不可欠だと思います。

政府には、国民の声にしっかり耳を傾け、より丁寧な説明を期待したいところですね。
 

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