節税
20年先の税金の未来に関してさまざまな視点を交えて推測を行っていく本連載。
第4回の今回は、前回の「医療費」や「年金制度」ではなく、「消費税」の切り口をオープンデータから読み解いてみたいと思います。
2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられてから1年が経過しました。
今回の増税は急激な少子高齢化の中で増え続ける社会保障財源の確保が狙いで行われました。
菅義偉首相は、人口減少がもはや避けられないと認識したうえで「将来的なことを考えたら行政改革を徹底したうえで、国民にお願いして消費税は引き上げざるを得ない」と明言しており、近い将来にまた消費税は上がることが予想されます。
少し先の未来はこうして予想が立ちますが、それでは少し遠い未来である20年後はどうでしょうか。
今回は、20年後である2040年に消費税がどうなっているか推測してみようと思います。
日本で始めて消費税が導入されたのは今からおよそ30年前の1989年に遡ります。
いまや私たちの生活に当たり前にある消費税ですが、当時は日々の暮らしに欠かせない「消費」に対して課せられる新たな税であり、生活に直結して負担がかかるだけに国民の拒否反応は凄まじく、反対運動が全国各地で起こるほどでした。
そんな反発を受けながらも1989年に3%、1997年に5%、2014年に8%と段階的に消費税は引き上げられ、2019年には10%まで引き上げられてきたという歴史があります。
そもそも、なぜ消費税を導入するに至ったのでしょうか。
消費税が導入された理由は以下の3つがあります。
1.税制全体のバランス
2.個別間接税の問題点の解決
3.高齢化社会への財源の確保
消費税導入以前の日本は所得税を中心とする税体系になっていました。
しかし、経済や社会が変化するとともに所得税の負担が給与所得者に偏っていき、納税者の不公平感が高まってきたため公平性を確保してバランスをとる必要がありました。
間接税とは、消費税のように税を納める人と税を負担する人が異なる税金のことをいいます。
今はありませんが、消費税を導入する前の日本には物品税という贅沢品に対して税金を課す制度がありました(消費税導入に伴い、物品税は廃止されています)。
この物品税は品物ごとに課税するかどうかを定められている税制ですが、時代の変化とともに国民の生活水準が上がっていき、税制上は贅沢品に定めていたものでも購入することができる国民が次第に増えてきました。
そうすると、何が贅沢品として課税すべきなのかの基準が曖昧になっていき、運用が困難になっていた状況がありました。
また、消費の対象がモノからコトへ変化していった中で、モノ(物品)には課税されるがコト(サービス)には課税されないという不均一さも問題視されていました。
日本は世界的に見ても高齢化が早く進んでおり、従来のように所得税をメインとして社会保障の財源を確保する方法では今後限界に達することが予想され、当時から喫緊の課題となっていました。
そこで、働き手だけでなく幅広く公平に分かち合える税制として消費税が導入されることになったのです。
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冒頭で、近い将来に消費税はまた引き上げられることが予想されると記載しましたが、少し遠い未来の20年後もやはり消費税は引き上げられ続けることが予想されそうです。
厚生労働省が2019年に発表した「今後の社会保障改革について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000474989.pdf)によると、2040年の社会保障給付費の総額はおよそ190兆円になると見通しをたてています。
現在の社会保障給付費はおよそ121兆円ですので、今よりおよそ1.5倍に膨れ上がる計算になります。
これとは別に、日本の人口は2040年には今よりおよそ3千万人減の1億人を下回ることが予測されています。
つまり、社会保障給付費が膨れ上がるのと裏腹に、それを維持するための支え手が減っていくということです。
そうすると、社会保障給付の財源を確保するための消費税は、いったいどこまで引き上げる必要があるのでしょうか。
GDPの1%は消費税収の2%に相当するという関係があります。
ここで、厚生労働省の「今後の社会保障改革について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000474989.pdf)によると、2040年のGDP比は今よりおよそ2.5%上昇することになるとの見通しをたてています。
これより、消費税収は今より5%引き上げる必要がある計算になります。
しかし、これで解決するわけではありません。
現在すでに社会保障の財源が足りておらず、毎年およそ20兆円を国や地方に借入して運用している状況があります。これが将来の世代への債務となっており、消費税率に換算するとおよそ8%となります。
以上の2つを加えることにより、2040年には今よりさらに13%引き上げた23%にすることで、社会保障の財源が確保できるといえそうです。
世界的にみると、欧州の国々ではすでに20%を超える消費税を課している国が多数ありますので、先ほど計算した23%という数字は非現実的な数字とはいえないでしょう。
しかしながら、菅首相が述べた行政改革の徹底など消費税によらない財源確保の方策はありますので、まずはそちらが今後は求められていくと考えられます。
次回は、消費税だけではなく所得税などを含めた税金全体が今後どうなっていくかを推測していこうと思います。
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