節税

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「減税では届かない層」への新支援――“給付付き税額控除”とは!?

「減税では届かない層」への新支援――“給付付き税額控除”とは!?

「減税では届かない層」への新支援――“給付付き税額控除”とは!?

日本初の女性総理として誕生した高市早苗首相。就任直後から世論調査では高い支持率を記録し、政策の柱として掲げた「税と社会保障の一体改革」に注目が集まっています。

その中でも、首相が特に意欲を示しているのが「給付付き税額控除」の導入です。高市首相は「減税と社会保障を一体で考える」と述べ、年内にも制度設計の検討を本格化させる方針を示しました。

 

物価高が続き、実質賃金の低下も止まらない中で、国民の最大の関心事は「家計の下支え」にあります。選挙での野党躍進を受け、政府もようやく所得税や住民税の減税、そして「年収の壁」緩和など、働く人を中心とした負担軽減策に乗り出しました。とりわけ年収の壁の見直しは、働きたい人が働ける環境を整える施策として注目され、家計支援と労働参加の両立を期待する声が高まっています。

 

しかし、こうした「減税中心」の支援策には、構造的な限界もあります。所得が低く、そもそも税金をほとんど払っていない世帯には、減税の恩恵が届かないのです。

その“支援のすき間”を埋める新たな仕組みとして浮上しているのが、「給付付き税額控除」です。本稿では、この制度が注目される背景と仕組み、そして導入に向けた課題を整理していきます。

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■なぜ“給付付き税額控除”なのか――減税の限界が見え始めた

 

いま、政府の経済政策の軸にあるのは「働く人への支援」です。年収の壁を引き上げ、手取りを増やす方向での制度改革が進む一方で、減税にも高い期待が寄せられています。

 

しかし、減税の仕組みを冷静に見ていくと、支援の効果に明確な“偏り”があることが分かります。

たとえば、所得税を年間10万円納めている人が4万円の減税を受けると、支払う税金は6万円に減ります。その一方、所得が低く、もともと税をほとんど払っていない人は、「4万円減税」といわれても実質的な恩恵はゼロです。

つまり、減税は税を払っている人にしか効果がなく、最も支援が必要な層ほど取り残される構造的な問題を抱えています。

 

こうした課題を補うために構想されているのが、「給付付き税額控除」です。

仕組みとしては、所得に応じて税を控除する点は減税と同じですが、控除しきれない分を現金で給付するという点が異なります。減税と給付の“中間”に位置する再分配モデルといえるでしょう。

 

アメリカの「勤労所得税額控除(EITC)」やイギリスの「ワーキングタックスクレジット」など、海外でも給付付き税額控除はすでに広く活用されています。しかし、これらは主に「働く低所得層」への支援を目的とし、勤労意欲を高める“就労促進型”の制度です。

 

対して、日本で議論されているモデルは、減税では支援が届かない層をどう救うかという再分配重視の仕組みであり、ベーシックインカムに近い“格差是正型”の性格を持っています。具体的な制度設計はこれからではあるものの、いまの報道から見える範囲では、同じ名称でも目的と性格はやや異なるものとなる可能性がありそうです。

 

日本ではこれまで、所得把握や行政コストの問題から導入が見送られてきましたが、マイナンバー制度の普及によって、ようやく実現可能な環境が整いつつあります。

 

 

■“年収別でどう違う?”――減税だけ・減税+給付・給付だけの関係

 

では、実際にどのように支援内容が変わるのかを、年収別に見てみましょう。

ここでは、政府が掲げる「1人あたり4万円の負担軽減」を例に考えてみます。

 

まず、年収800万円の人の場合。

この層は所得税や住民税を十分に納めているため、4万円分の軽減はすべて減税によって処理される可能性が高いでしょう。税金を払う額がもともと多いため、4万円をそのまま差し引くことができ、現金での給付はありません。いわば、支援の形が「減税のみ」で完結する典型例といえるでしょう。

 

次に、年収400万円の人の場合。

この層は課税所得が中程度で、税金を払ってはいるものの、その額が4万円に満たないことが多いでしょう。たとえば、その年の税額が2万円なら、まず2万円分が減税され、残りの2万円は現金で給付されます。このように、「減税」と「給付」が組み合わさるのが“給付付き税額控除”の仕組みです。

 

そして、住民税非課税の人の場合。

税金をほとんど、あるいはまったく納めていないため、減税では相殺できる部分がありません。したがって、4万円の軽減分は全額が現金給付として支給されます。このケースでは、完全に「給付だけ」で支援が行われる形となります。

 

要するに、「給付付き税額控除」は、

 

・税を多く払っている人には減税として、

・税が少ない人には減税と給付を組み合わせ、

・税を払っていない人には給付として、

 

所得水準に応じた支援を自動的に行う仕組みということです。

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■導入に向けた課題と見通し――公平性と実務の両立が鍵

 

もちろん、制度の導入には課題も少なくありません。

 

第一に、所得情報の正確な把握。

給与所得者は源泉徴収で明確ですが、自営業者やフリーランスなどは申告内容にばらつきがあり、公平な給付を行うためには、マイナンバー制度を軸とした所得データの精度向上が欠かせません。

 

第二に、制度設計の複雑さ。

どの層に、どれだけ支援を行うのかを明確にしなければ、かえって混乱や不満を招くおそれがあります。また、所得変動の大きい層や年金生活者など、既存制度の狭間にいる人々への対応も重要です。

 

第三に、財源の問題。

減税と給付を併用すれば当然財政負担は増えますが、低所得層への支援を通じた消費刺激効果も期待できます。「財政の持続性」と「経済効果」をどう両立させるかが、この制度を実現できるかどうかの分かれ目となります。

 

いかがでしょうか

 

給付付き税額控除は、減税では届かない層にまで支援を広げる新しい再分配の仕組みです。減税と異なり、税を払っていない人にも現金という形で支援を届けられるため、より公平な効果が期待されます。

 

その一方、制度の複雑さや財源負担といった課題もあり、高市政権がこの制度をどこまで実現できるかは未知数です。

今後、与野党協議が本格化していくなか、新政権の“本気度”が問われる局面といえるでしょう。

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