保険年金

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20年先の税金の未来に関して 連載③医療費について

20年先の税金の未来に関して 連載③医療費について

20年先の税金の未来に関して 連載③医療費について

前回は、年金の20年先について言及してきました。

次に、多くの人々が懸念を抱いているのが、将来の日本の医療費についてです。

日本は2010年の1億2800万人をピー クとして、長期的で急激な人口減少の時代に突入しました。

現在よりも少子高齢化が進むと考えられる20年先、日本の医療費がどのように推移していくのか見ていきましょう。

2017年度に医療機関に支払われた医療費の総額は、前年度よりも約1兆円増大して、42兆円となりました。

国民1人あたり33万円で、かつてない過去最大を更新しました。

年々、医療費が増大する要因は75歳以上の後期高齢者の医療費の増大です。

75歳以上の後期高齢者の1人当たり医療費は94万円にものぼります。

もちろん、高齢化の進む日本では、今後も医療費の増大が予測され、2040年には67兆円になるとの見方もあります。

 

日本の医療費の増大率は高いのか?

 

ヨーロッパに比べると高くはない

 

2040年には、団塊ジュニア世代が65歳以上に達し、65歳以上人口比率が2015年の27%から35%に激しく上昇、同年齢以上の人口は3900万人超を迎える時代がやってきます。

65歳以上の人口は2015年の3386万人から2040年に3920万人と1.2倍になります。

さらに、医療・介護支出費が激しく増大する75歳以上の人口は2015年の1632万人から2040年に2239万人と1.4倍の大幅増大と予測されています。

医療費が増大する要因としては、テクノロジー革新による医療の発展もあります。

2040年の社会保障費が1.6倍になると言われていますが、本当に1.6倍に増えると考えるのは妥当でしょうか?

 

社会保障費の金額だけで考えてはいけない

 

2040年度に社会保障費が190兆円で、2018年度の1.6倍になるという今回の予測はどんな経済状況の予測がベースとなっているのでしょうか。

それは、名目GDP成長率が2018~2027年度までは年率1%台後半~2%台半ば、2028年度以降は年率1.3%というものです。

その結果、日本の名目GDPは2018年度見込みの564兆円から2040年度には791兆円と1.4倍になるという予測がベースとなっています。

つまり、私たちの所得が今のまま社会保障費負担が1.6倍になるのではありません。

私たちの所得が1.4倍になった未来の世界で、社会保障費負担が1.6倍になっているわけです。

経済統計の世界では、特に5~50年など長期の予測を行う際は、金額を基準に物を考えてはいけないという考えがあります。

それは、物価が変わってしまうため実質的な大きさがわからなくなってしまうからです。

 

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対GDP比という指標

では、こうした長期にわたる予測について、金額ではなく、どんな指標をベースに考えればよいでしょうか。

それが「対GDP比」という指標です。

GDPというのは一国の経済規模のことであり、対GDP比という、個々の費用を経済規模に占める割合で見るわけです。

今回の予測では、社会保障費の対GDP比はどうなっているのでしょうか。

2018年度は22%で、これは日本の経済活動の22%が医療・介護や年金、子育てなどの社会保障に使われていることを意味します。

これが2040年度には24%になるという予測です。

2018年度と比較してみれば、2%ポイントの差異であり、倍率にして1.1倍くらいの増大にすぎません。

 

実質的には1.1倍

この1.1倍という数字は、医療・介護の将来イメージを明らかにしてくれます。

社会保障費の中には、年金や子育て費用も含まれますが、これらの対GDP比の増大は小さいため、ここでは社会保障費の増加は医療・介護によるものとして考えてみましょう。

先に述べたように、2015年から2040年にかけて日本は、最も医療・介護費を使う75歳以上人口が1.4倍に増大します。

しかし、実際の医療・介護費は、75歳未満人口の減少や、現在進められている医療提供体制改革の効果などから、1.1倍に抑制できるということなのです。

 

いたずらに恐れる必要はない

物価の伸びの影響は、対GDP比では看過してよく、そのため、対GDP比の意味するところは、数量的な経済活動の大きさでもあります。

つまり、日本経済の数量的大きさの中で社会保障の占める割合は2018年度に22%でしたが、それが2040年度には24%くらいになるということです。

 

20年先の展望

こうした対GDP比での社会保障費の流れを見ると、2000~2015年度では、15%から22%と7%ポイントの上昇を示していました。

これは倍率にして1.5倍です。

2018~2040年度の社会保障費の増大は1.1倍なので、実質的には2000~2015年度よりも緩やかな見通しだということがわかります。

対GDP比で考えると、為替の違いなどを別にできるため、国際比較も容易になります。

ヨーロッパ主要国の社会保障費の対GDP比は、日本より高いのです。

高齢化率は日本が突出して高いにもかかわらずです。

たしかに日本は世界がかつて経験したことのない超高齢化社会にヨーロッパ諸国に先駆けて突入していますが、高齢化に伴う社会保障費の負担増大という意味では、すでにヨーロッパ諸国が先を行っているということです。

 

財政赤字も視野に入れていくことが必要

もちろん、日本の税や社会保険料は対GDP比がヨーロッパより低く、そのため、財政赤字が山積しています。

社会保障の効率化だけでなく、税や社会保険料の負担増大も検討していく必要があるでしょう。

次回は、20年先の消費税に関してお話ししていきます。

 

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