資産運用
退職を迎えるということは、ひとつの人生の節目であると同時に、新しい生活の始まりでもあります。そのタイミングで手にするのが「退職金」です。長年勤め上げた自分自身へのご褒美であり、これからの暮らしを支える大切な資金となります。
ただし、退職金は一生に一度きりのまとまったお金です。使い道を間違えると、将来的に「お金が足りない」という不安につながることも。特に平均寿命が延び、老後の生活が20年、30年と長くなる時代には、「守りながら、少しずつ増やしていく」という考え方が大切です。
本記事では、これから退職金の運用を考えるシニア世代の皆さんに向けて、準備の仕方や商品選びのポイント、注意すべき点などをわかりやすく解説していきます。
【INDEX】 ■退職金の受け取り方と税金の仕組み ■運用前に考える3つのステップ ■シニアに向いている運用商品 ■おすすめの資産配分モデル ■退職金運用で失敗しないための注意点 ■ まとめ:守りながら、ゆとりある老後へ |
まず押さえておきたいのが、「退職金の受け取り方」です。一般的には「一時金(まとめて受け取る)」または「企業年金(分割で受け取る)」の2パターンがあります。一時金で受け取る場合は、「退職所得控除」という税制優遇があります。
この退職所得控除は、勤続年数に応じて控除額が増え、たとえば30年勤務した人の場合、約1500万円まで非課税になります。退職金は他の収入と比べて税負担が軽くなる仕組みが整っているのです。
ただし、他の収入と一緒に受け取った場合、課税対象になるケースもあるため、事前に税理士やファイナンシャルプランナーに相談するのが安心です。
運用を始める前に、まずは土台をしっかり整えることが大切です。以下の3つのステップを踏んで、準備を進めましょう。
①生活費と緊急資金を確保
まず最優先にすべきなのは、「日々の暮らしを支える資金」を安全に確保することです。最低でも3〜5年分の生活費を、預金や定期預金、個人向け国債といった元本保証のある方法で管理しましょう。また、病気や介護といった突発的な支出にも対応できる予備費も確保しておくと安心です。
②毎月の収支を把握する
年金は毎月いくらもらえるのか、その他の収入はあるのかを明確にし、支出と比較しましょう。毎月の赤字分だけを運用で補うようにすれば、大きなリスクを取らずに済みます。
③全資産の棚卸しをする
退職金以外にも、預貯金・保険・不動産・株式などがある場合は、それぞれの資産の性質(すぐ使えるか、将来まで寝かせるか)を把握しておきましょう。これにより、運用するべき金額が明確になり、ムダなリスクを回避できます。
シニアの資産運用は、「減らさない」「必要な時に取り崩せる」がキーワードです。以下は代表的な運用方法です。
●定期預金・個人向け国債
元本が保証されており、リスクはほぼゼロ。利息は少ないですが、生活費として確保するには最適です。特に「個人向け国債(変動10年)」は安全性が高く、金利も預金よりやや有利です。
●投資信託(債券型・バランス型)
少額から始められ、分散投資が可能なため初心者にも人気。特に値動きが小さい債券型や、リスクとリターンのバランスを取ったバランス型がおすすめです。
●ロボアドバイザー
最近は自動で分散投資を行ってくれる「ロボアド」が注目されています。設定さえすれば、自分に合った運用を自動で行ってくれるので、投資経験が少ない方でも始めやすいです。
●外貨預金・外貨建て商品
為替差益を狙う方法ですが、為替リスクが大きいため、あくまで一部資産にとどめておくのが無難です。
老後の資産運用では、「資金の目的」に応じて分けて運用することが大切です。以下のような配分モデルが考えられます。
60%:生活費・医療費など(定期預金や国債)
30%:安定運用枠(債券型投資信託)
10%:成長枠(国内外の株式やバランス型ファンド)
これを「バケツ運用」と呼ぶこともあり、目的に応じて使い分けることで、安心感を持ちつつ、適度なリターンを目指せます。
退職金運用で多い失敗は、以下のようなパターンです。
・「高利回り」をうたう投資話にのる
・生活資金までリスク商品に投資する
・投資内容を理解しないまま契約する
・経済状況が変わっても運用を見直さない
これらを避けるためには、「わからないものには手を出さない」こと、そして定期的に運用方針を見直すことが大切です。不安があるときは、信頼できる金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しましょう。
退職金は人生後半の安心を支える大切な資金です。焦って大きく増やそうとせず、まずは「使い道を明確にすること」そして「資産を目的別に分けること」から始めてください。
守りをベースにした運用を心がけることで、無理なく、でも着実に老後の生活を支えていくことができます。自分に合ったペースで、お金と上手につきあっていきましょう。
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