資産運用
「よかったら、お付き合いされている不動産業者や営業マンを紹介していただけませんか?」
不動産投資初心者の方から相談を受ける際、著者によく寄せられる質問の一つです。
質問の背景には、「悪い不動産業者・営業マンに騙されたくない(業者の良し悪しを見極める自信がない)」「経験者と取引のある不動産業者なら良い物件情報を沢山抱えているだろう」「紹介客なら丁寧に相手してもらえるだろう」――、著者の経験上、ご相談者にはこうした思惑があるのだろうと分析しています。
実際、著者自身が何度も取引している不動産業者や営業マンを、以前ご相談者に紹介したことがあります。しかし、結果はご相談者・紹介先の営業マン双方の満足に繋がったケースばかりではありませんでした。むしろ、ご相談者を困らせてしまったり、営業マンから苦情や愚痴の連絡が寄せられることもあったほどです。
当然ながら、ご相談者は常識・良識のある方ですし、紹介先の不動産業者・営業マンも信用の置ける方ばかりです。それなのに、なぜトラブルに繋がるケースが少なくないのでしょうか?
本稿では、「良い営業マン」の定義がなぜ食い違うのか、割安物件をめぐる摩擦の実態、そして初心者が選ぶべき業者像について分かりやすくご説明します。
不動産投資の経験を重ねている方にとって“良い営業マン”とは、割安な物件情報を素早く持ってきてくれる人です。
投資判断や金融機関との融資交渉は自分で行えるため、必要なのはタイムリーな情報と最低限の調整。必要以上に連絡や世話を焼かれても“ありがた迷惑”に感じることも多く、営業マンに期待するのは、あくまで「淡々とした橋渡し役」であることが多いのです。
その一方で、不動産投資初心者が求める“良い営業マン”はこれとは対照的です。
融資のアレンジをしてくれたり、初心者でも分かるように丁寧に説明してくれたり、些細な質問にも気持ちよく答えてくれること。そして、頻繁に連絡を取り、不安を解消してくれることが望まれます。
さらに、投資初心者の方の多くは、こうした“安心感”を求めつつも、同時に「割安な物件を早く紹介してほしい」という期待も抱いています。つまり、価格とスピード、さらに丁寧な対応を三拍子そろえて要求してしまう。ここに現実との大きなギャップが生まれるのです。
営業マンの立場からすると、割安な物件ほど売主の気が変わる可能性が高く、競合他社に先を越されるリスクも大きいため、できる限り早く契約に結びつけたいというのが本音です。顧客が判断を迷って時間をかければ、次の顧客に回すことすら難しくなり、大きな機会損失につながります。
しかし、いかに割安物件だとしても、投資初心者が購入を即決即断するのは容易ではありません。大金を動かす覚悟も然ることながら、融資の準備や家族との相談、条件確認などの実務調整に時間を要するのは仕方ない側面もあります。
その結果、せっかく割安な情報を流したにもかかわらず、営業マン側には「時間ばかりかかる」との不満が生じます。やがて情報が回ってこなくなり、相談者からは「紹介してもらったのに冷たい対応だ」と受け止められる。こうしたすれ違いは珍しくないのです。
場合によっては、営業マンから紹介者に対して「なぜあの方を紹介したのか」「せっかくの紹介だが、これ以上は付き合いきれない」といった苦情や愚痴が寄せられることもあります。双方に悪意がないにもかかわらず、紹介そのものがトラブルの原因になってしまうというわけです。
では、どうすればよいのでしょうか。結論は、自分の知識や経験に応じて業者を選ぶことに尽きます。
世の中には、金融機関との提携ローンを持ち、事前審査を終えた収益物件だけを販売する不動産業者も存在します。また、購入後の収支シミュレーションやPM業務までを一括して引き受ける“パッケージ型”の営業を強みとする会社もあります。こうした業者は、安心感とわかりやすさを売りにしており、初心者にとっては心強い味方といえるでしょう。
もちろん、そうしたサービスのコストは販売価格に織り込まれています。販売価格だけを見れば、経験者が利用する不動産業者よりも割高となる場合が多いのも事実です。経験者からは「そんな価格で買うなんて、もったいない」と指摘されることもあるかもしれません。ですが、投資初心者にとっては必要なプロセスと割り切る発想も十分に合理的です。
自動車にたとえると分かりやすいでしょう。オークション代行業者を使えば安く購入できますが、多くの人はディーラーや中古車販売店を利用します。銀行ローンより金利が高くても、手続きが簡単なディーラーローンを選ぶ人は少なくありません。不動産においても同様で、初心者が「安心」「わかりやすさ」を優先するのは健全な選択にほかなりません。
いかがでしょうか。
「いい業者を紹介してもらえば安心」という考え方は、一見すると合理的な近道のように思えます。ところが、実際には人によって“良い営業マン”の定義が大きく異なるため、紹介が逆にトラブルの火種となることも少なくないのです。
投資経験者にとっての“良い営業マン”は、スピードと割安さを重視するブローカー型。初心者にとっての“良い営業マン”は、融資支援や丁寧な説明で安心を与えてくれるディーラー型。このギャップを理解しないまま紹介を受けると、双方に不満が残る結果となりかねません。
だからこそ、自分の立場を冷静に見極めることが欠かせません。安心を求めるのか、それともスピードを優先するのか。自分に合った業者を選ぶことが、結局は最も確実な近道であるといえるでしょう。
Real Media メールマガジン登録完了
不定期(月1回程度)にてお役立ち情報のお知らせを
メルマガにてお送りさせていただきます
未来に向けての資産運用にご活用くださいませ。