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旅行や出張の際、高級ホテルのラウンジで一息つき、レイトチェックアウトでゆったりと滞在を楽しむ――。そんな「上質な体験」を売りにしてきたアメックスのクレジットカードに、突如として特典変更、それも“特大の改悪”が発表され、いまSNSを中心に大きな波紋を呼んでいます。
発端は2025年8月、アメリカン・エキスプレス社より発行されている『マリオット・ボンヴォイ・アメリカン・エキスプレス・プレミアム・カード(以下:マリオットアメックス)』のサービス内容見直しの告知でした。
元より、マリオットアメックスの年会費は49,500円と高額でしたが、年間150万円の決済で「無料宿泊特典」が、年間400万円の決済でマリオット・ボンヴォイの「プラチナエリート」資格が得られるなど、条件を満たせば年会費を上回る価値を享受できる点が人気の理由でした。
しかし今回の見直しにより、年会費は49,500円→82,500円に引き上げ。無料宿泊特典の条件は年間150万円→400万円決済に、プラチナエリート資格の取得条件も400万円→500万円決済に引き上げられ、特典のハードルが大幅に上がる結果となりました。
さらに問題視されたのは、これほど大きな改定でありながら、新たな特典追加や補完策がほとんど見られなかったこと。一部SNSでは「アメックスは保有者を減らしたいのでは?」との憶測まで飛び交う事態に。実際、YouTubeやX(旧Twitter)では「解約宣言」が相次ぎ、炎上騒ぎとなりました。
とはいえ、これは単なる“一クレジットカードの改悪”にとどまらず、「高年会費・高付加価値型カードの設計そのもの」が見直されつつあることを象徴しているのかもしれません。
本稿では、今回のマリオットアメックスの改定内容を整理しながら、今後の高級カード市場の潮流について考察してみたいと思います。
まずは、2025年8月に発表されたマリオットアメックスの改定内容を簡潔にまとめてみましょう。
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<マリオットアメックスの改悪内容>
・年会費の値上げ(49,500円→82,500円)
・無料宿泊特典の獲得条件変更(年間150万円決済→400万円決済)
・プラチナエリート資格の獲得条件変更(年間400万円決済→500万円決済)
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とくに問題視されたのは、「3年間で2回の値上げ」「約2.5倍という金額増」「実質的な特典削減」といった、負担増だけが目立つ構造です。
前身となるSPGアメックスは年会費34,100円でしたが、2022年のリニューアルで49,500円に引き上げられ、今回さらに82,500円に――という流れを見れば、ユーザーの怒りも理解できます。
参考までに、JCBの最上位カード「ザ・クラス」は年会費55,000円、三井住友カードのプラチナカードは33,000円〜55,000円です。マリオットアメックスは、これらを上回る“超高額カード”になってしまいました。
しかも、カード利用者が最も魅力を感じていた無料宿泊特典やプラチナエリート資格の条件が、一般の方にはかなり達成困難な水準に引き上げられてしまいました。
特にプラチナエリートを取得できると、クラブラウンジへのアクセス、朝食無料、16時までのレイトチェックアウトなどが付帯し、1泊あたり数万円の価値があるともいわれていただけに、今回の改定は「特典の中核が崩れた」と見る人も多いようです。
著者個人の所感としても、年間400万円以上の決済ができない方にとって、このカードはもはや“旨みのないカード”になったと感じます。
とはいえ、こうした見直しはマリオットグループやアメックスにとって、もはや避けがたい選択でもあったと考えられます。
ここで一度、サービス提供者である、マリオット側・アメックス側の視点で考えてみましょう。
たとえば無料宿泊特典は、ピーク時の高級ホテルに適用すれば年会費の元が取れるどころか、それ以上の価値になるケースも少なくありません。SNSなどで「裏技」的な活用法が広まり、ギリギリの決済額で特典だけを狙う利用者が急増したと考えられます。
同様に、プラチナエリート特典を得る利用者も急増し、一部のマリオット系ホテルではクラブラウンジが常に満席、朝食会場が渋滞状態になるなど、「もはや“上級会員の特典”が特典でなくなる」状況も起きていました。
実際、著者自身も何度かラウンジの混雑に直面し、落ち着いて過ごせる空間とは程遠い体験をしたことがあります。
こうした混雑や提供コストの増加は、マリオットアメックスに限った話ではありません。
・ヒルトンアメックスによる上級ステータスの“量産”
・ANA・JALのプレミアムカードでのラウンジ利用の飽和
など、各社が “お得な上級体験”の裾野を広げすぎた結果、供給側の管理・収益構造が崩れつつありました。
加えて、インバウンド需要の回復やホテル稼働率の上昇が追い風となり、「今なら黙っていても客が来る」状況のなか、コストのかかる特典提供を見直すタイミングがちょうど来たともいえるでしょう。
今回のマリオットアメックスの改定は、「高付加価値型カード」の流行が大きな転換点を迎えていることを示しているのかもしれません。
そもそも、富裕層や年間50泊以上の宿泊者など、限られた人々だけが得ていた特典を「年会費と一定のカード決済」で“再現”できるようにしたことが、このモデルの魅力でした。
しかしその再現性が広がりすぎれば、混雑と不満が生まれ、「特別なサービスは、やはり特別な人のためにあるべきだ」という原点に戻るのは当然の流れとも言えます。
先ほど例示した「ヒルトンアメックス」「ANA・JALのプレミアムカード」などは同様の構造的課題を抱えているため、遠からずサービス改訂の案内があっても不思議はないでしょう。(先日JALが発表した、年会費約60万円の「JAL Luxury Card」も、この流れの一環と捉えることができます)
いかがでしょうか。
著者のような“一般人”にとっては寂しい話でもありますが、今回のマリオットアメックスの大改定は、「安価に得られる“上級体験”」が広がりすぎたことの反動といえるかもしれません。
ユーザーとしても、クレジットカードの選定基準を見直す時期が近いといえるのかもしれません。
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