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不動産賃貸の世界は、長らく「対面が当たり前」の業界でした。物件探しは店頭で相談し、内見は現地に同行、契約時は紙の書類に署名押印――。こうした流れが長年、当たり前のものとして続いてきました。
しかし、ここ数年でこの常識は大きく変わりつつあります。新型コロナウイルスの流行を契機に、接触を避けながら契約を進める「非対面型」の取引が一気に広がり、不動産賃貸の現場にもデジタル化の波が押し寄せました。
なかでも「オンライン内見」と「IT重説(オンライン重要事項説明)」は、その代表格といえます。これまで現地で行うのが当然とされていたプロセスを、自宅や遠方からスマートフォン一つで完結できるようになったのです。
なぜ、ここまでオンライン化が急速に進んだのでしょうか。また、便利になった一方で、どのような注意点があるのでしょうか。
本稿では、不動産賃貸におけるIT化の進行と、オンライン内見・IT重説の仕組み、そしてそれらを上手に活用するためのポイントを整理していきます。
■不動産賃貸の申込にもIT化が進行!
コロナ禍を経て、不動産賃貸の手続きは急速にデジタル化しました。これまで紙で行っていた申込書の記入や契約書のやり取りが、いまやメールや専用システムを通じてオンラインで完結するケースが主流となっています。
とりわけ、転勤や進学などで「遠方から物件を探す人」にとっては、この変化は大きなメリットです。かつては現地に行かないと始まらなかった部屋探しが、パソコンやスマートフォン一つで、検索から申込、契約まで一気通貫で進められるようになりました。
また、国土交通省がIT重説(オンラインによる重要事項説明)を制度化し、さらに2022年には主要書面の電子交付も恒久化されたことも、この流れを後押ししています。
非対面でも宅地建物取引士がオンラインで説明すれば、対面契約と同様に法的効力を持つと認められたことで、業界全体が「オンライン前提」に移行しやすくなったのです。
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<参考>国土交通省ホームページ
『ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について』
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000092.html
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とはいえ、すべてをデジタルに任せればよいというものでもありません。IT化の流れを正しく理解し、どこまでをオンラインで行い、どこからを現地確認に切り替えるか――その見極めが大切です。
「オンライン内見」とは、現地に行かずにビデオ通話や動画を通じて部屋を見る方法です。不動産会社の担当者が現地からスマートフォンやタブレットを使って映像を配信し、利用者は自宅からリアルタイムで室内の様子を確認します。
最大の利点は、移動せずに複数物件を比較できることです。遠方からの引っ越し、忙しい社会人や子育て世帯などにとって、時間とコストを大きく削減できるメリットがあります。また、気になる箇所をその場で担当者に指示して映してもらえるため、写真や間取り図では分からない細部も確認しやすいのが特徴です。
一方で、映像では伝わりにくい情報もあります。たとえば、部屋の湿気や風通し、収納のサイズ感、外からの騒音などは、実際に現地で体感しないと分かりづらいポイントです。担当者に「窓を開けて外の音を確認してもらう」など、オンラインでもできる範囲で工夫するのが望ましいでしょう。
また、室内ばかりに意識が向き、エントランスや共有部分を見落とすケースもあります。特にポストやゴミ捨て場、エレベーターの有無、駐輪場の雰囲気などは、居住後の利便性に直結するため、可能であれば映像で確認しておきましょう。
ちょっとした工夫次第で、オンライン内見でも十分に安心感のある判断が可能です。
「IT重説」とは、宅地建物取引業法で義務づけられている“重要事項説明”をオンラインで実施する仕組みです。従来は契約前に宅地建物取引士が対面で説明を行うことが必須でしたが、IT重説の制度化によりオンラインでの説明が可能になり、2022年からは主要書類の電子交付も認められました。
この仕組みにより、契約者はわざわざ店舗に出向かずとも、自宅で書類を確認しながら説明を受けることができます。仕事の合間や遠方からの手続きでも対応できる点は大きな利便性です。
注意点としては、まず通信環境の安定性が挙げられます。説明の途中で映像や音声が途切れると、重要な内容を聞き漏らすおそれがあるため、可能であれば有線接続や安定したWi-Fi環境で行うのが望ましいでしょう。
また、説明に使われる書類は事前にPDFなどで送付されていることも多いため、可能であれば印刷して手元で確認しながら進めると理解が深まります。
もちろん、オンラインだからといって説明を聞き流してしまうのは禁物です。対面と同様、疑問点はその場で質問し、納得したうえで契約に進むことが大切であることは忘れないようにしましょう。
いかがでしょうか
不動産賃貸の世界は、いまや「対面からオンラインへ」という大きな転換期を迎えています。
オンライン内見もIT重説も、時間と距離の制約をなくす便利な仕組みであり、特に春の繁忙期には強力な味方となるでしょう。
しかし、便利さの裏には「見えないリスク」も存在します。大切なのは、オンラインを“使いこなす”という姿勢です。内見では質問と確認を怠らず、契約では理解を曖昧にしない。その積み重ねが、後悔のない新生活につながります。
デジタル化が進む今こそ、“画面の向こう側”を見る力が問われているのかもしれません。
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