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先日、アップルから新型iPhoneが発表されました。ナンバリングのiPhone17やそのプロモデルだけでなく、かねてより噂されていた薄型のiPhone Airも初登場。
最安モデルでも約13万円~と、決してお手頃な価格ではありませんが、弱点であったリフレッシュレートの改善やバッテリーの大幅強化など、前モデルからの正当進化として概ね好意的に受け止められているようです。日本におけるiPhone人気は依然として健在で、発売に合わせて購入を検討している方も多いでしょう。
ところで、アップルの新作発表の少し前、令和7年9月5日に総務省から出された注意喚起がいま、SNSを中心に話題を集めています。その注意喚起とは、キャリアショップ等の販売代理店でのスマホ購入において、「同じモデル・同じキャリアでも店舗ごとに端末販売価格が異なること」「購入時の“頭金”の扱いが通常イメージされるものとは異なること」の2点です。
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<参考>総務省ホームページ
『携帯電話端末の販売価格に関する注意喚起(令和7年9月5日)』
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_03000446.html
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アップルの発表直前のタイミングで出されたことからも、新型iPhoneの購入者に向けた警鐘という意味合いが強いと見られます。多くのスマホユーザーにとって一読の価値がある内容です。
本稿では、この注意喚起を踏まえ、消費者が知っておくべき仕組みと注意点を整理していきます。
総務省によると、キャリアショップにおけるスマートフォンの販売価格について誤解している消費者が少なくないといいます。
「同じキャリアで同じ機種なら、どの店舗で買っても同じ値段だろう」と考える人は多いでしょう。ところが実際には、同一キャリア・同一機種でも店舗によって販売価格が異なるのです。
たとえば、現行のiPhone16(128GB)をアップル公式で一括購入すると114,800円です。ところがNTTドコモ公式サイト(ドコモオンラインショップ)での一括価格は145,200円でした。(いずれも本稿執筆時点の価格)
この差額はキャリアの利益や値引き原資に相当します。各キャリアでは新規契約やMNP、光回線とのセット契約などで数万円単位の割引を行っていますが、その「割引演出」を可能にするために、もともとの販売価格を高く設定しているのです。
この販売戦略についてはSNSなどでたびたび指摘され、消費者の間でも周知が進みつつありますが、総務省が今回強調したのはこの先の話です。
すなわち「同じドコモ、同じiPhone16であっても、ドコモオンラインショップと店頭、さらには店舗ごとでも価格が異なる」という点です。たしかに、これを知っている人は案外少ないのではないでしょうか。
もっとも、販売店ごとに価格が異なること自体は商習慣として自然で、それだけでは問題とはいえません。問題なのは、その仕組みが購入者の誤解を誘発するような形で販売に結びついていることです。その象徴が「頭金」です。
一般に頭金といえば、住宅や自動車のローンで、代金の一部を前払いすることで月々の返済や利息を抑えるものを思い浮かべます。しかしキャリアショップで提示される「頭金」は、この常識とはまったく異なります。
たとえば販売価格10万円の端末で「頭金2万円」と説明されると、多くの人は残り8万円が割賦対象になると考えます。ところが実際には10万円全額が割賦の対象であり、頭金2万円は代理店の取り扱い手数料にすぎません。
実際、著者自身も数年前、キャリアショップで契約の直前に金額が合わないことに気づき、ようやく仕組みを理解できた経験があります。説明をそのまま受け入れていれば、何の疑問も抱かないまま契約に至っていたでしょう。店内には高齢者を中心に多くの客がいましたが、同じように誤解したまま契約した人もいたかもしれません。
大手キャリアショップでこうした販売が長年放置されてきたこと自体、驚きを禁じ得ませんが、今回はようやくここに注意喚起が入ったということになります。
では、なぜこのような仕組みが生じるのでしょうか。
総務省の資料によると、キャリアショップで端末を購入する場合、消費者は代理店と「端末の売買契約」を結びつつ、割賦払いについてはキャリアと「立替契約」を結ぶ二重構造になっています。割賦の基準額はキャリアの直販価格に固定されるため、代理店が設定する頭金はそこに上乗せされる形になるのです。
代理店にとって端末販売の利益はほぼゼロとされ、実質的には回線契約やオプション加入によるインセンティブで収益を確保しています。しかし、すべての客が必ずしも回線契約やオプションを申し込むわけではないため、固定費を回収する手段として「頭金」を設定しているのが実情だと考えられます。
言い換えれば、頭金は店舗の裁量によって増減可能で、これが「同じモデル・同じキャリアでも店舗ごとに端末販売価格が異なる」状況を生む主要因です。ほかで十分なインセンティブが回収できるようなケースでは、頭金の値引きや無料に応じてくれることもあるでしょう。
しかし、こうした事情を理解したうえで頭金に納得して支払っている消費者はほとんどいないはずで、これこそが問題の本質なのです。
では、購入者の立場でできる対策にはどんなものがあるでしょうか。
まずはアップルやキャリア公式オンラインストアの価格を基準にし、店頭で提示された金額が妥当かどうかを確認しましょう。そして「頭金が割賦額に反映されるか」を必ず確認することです。複数店舗を比較するだけでも、数千円から数万円単位での無駄を防げる可能性があります。
もちろん、キャリアショップの提供するサービスに付加価値を感じるなら、頭金の名目でお店にお金を追加で払うこともよいでしょう。あくまで理解・納得が重要であるからです。
いかがでしょうか。
新型iPhoneの登場に合わせて契約を検討している人にとって、販売価格や頭金の仕組みは軽視できない論点です。
同じモデルでも販売店ごとに価格が異なり、頭金は前払い金ではなく代理店の手数料。その背景にはキャリアと代理店の複雑な契約関係があり、結果として消費者にとって分かりにくい構造が放置されてきました。
事情を知れば一部納得できる面もあるとはいえ、誤解を前提とした売り方がまかり通ってきたことは看過できません。総務省の注意喚起は「遅すぎた」と言えるかもしれませんが、消費者にとっては重要な警告です。
新型iPhoneを安心して手に入れるためにも、契約時には価格の仕組みと頭金の意味を冷静に確認し、不要な負担を回避したいものです。
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