資産運用

資産運用

悪質な滞納者でも追い出しはNG!?注目の最高裁判決を解説します!

悪質な滞納者でも追い出しはNG!?注目の最高裁判決を解説します!

悪質な滞納者でも追い出しはNG!?注目の最高裁判決を解説します!

先日、不動産投資家はもちろんのこと、多くの不動産業界人が注目していた最高裁判所の判決が確定しました。
この裁判の争点は、「家賃を長期間滞納し、連絡も取れない入居者に対して、契約の解除や退去を求めること」の適法性。
ご存じの方も多いかもしれませんが、不動産賃貸借契約において、入居者さんの権利は、借地借家法や消費者契約法などの法令によって幾重にも守られています。

その最たる例の一つが、本件裁判の背景にあった、たとえ入居者側の悪質な債務不履行(家賃の未払いや正当な理由のない連絡拒否)があっても、大家側は簡単には契約の解除や退去を求めることができないというものです。

古いドラマなどでは、滞納した入居者の家具などを大家さんが怒りながらアパートの外に運び出して鍵も交換してしまうといったシーンもありましたが、現実にそれをやってしまったら大家側が訴えられてしまうのが、日本の法律なのです。

そうした背景もあり、今回の最高裁判決は、不動産賃貸業に関わる多くの人たちが注目していたわけです。

判決は、果たしてどんな内容だったのでしょうか?

[PR] 自分に合ったお部屋探しをレアル賃貸部にお任せください! 

 

■裁判の争点は家賃保証会社による、「契約解除」と「明け渡し請求」!

まずは、今回の裁判の内容をもう少し詳しくご説明します。
今回の裁判当事者は、正確にいえば大家さんではなく、民間の家賃保証会社です。
近年では、不動産賃貸借契約を締結する際、家賃保証会社と入居者さんが賃貸保証契約を締結するケースが増えています。
家賃保証会社ごとに細かな保証内容は異なりますが、概ね共通する部分は以下のとおりです。

--------------------------------------------
<家賃保証契約の内容>
①万一、入居期間中に入居者が家賃を滞納した場合、家賃保証会社が大家さんに所定期間は家賃を支払う

②家賃保証会社は滞納した入居者にその金銭を請求する

③滞納の金額や期間が一定ラインを超えると、契約の解除や退去の要求(建物明け渡しの請求)に移行する
--------------------------------------------

かつては、家賃滞納への備えとして、入居者さんの親族や友人などに連帯保証人となってもらうことが主流でした。

しかし、時代の流れによる人間関係・価値観の変化や、連帯保証人の権利保護に繋がる法改正を経て、現在では家賃保証会社を利用するケースが多くなっています。
そして、具体的に争点となったのは以下2つの賃貸保証契約の条項でした。

--------------------------------------------
<家賃保証契約の内容>
(1)保証会社は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3カ月分以上に達したときは、無催告にて原契約(賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約)を解除できるものとする

(2)(a)賃借人が賃料等の支払を2カ月以上怠り、(b)保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡が取れない状況にあり、(c)電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から建物を相当期間利用していないものと認められ、(d)建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存する場合には、賃借人が明示的に異議を述べない限り、保証会社が、建物の明渡しがあったものとみなすことができる
--------------------------------------------

この条項を読んで、皆さんはどのように感じられるでしょうか?
少なくとも、(2)については、「2ヵ月以上滞納して、連絡も取れず、部屋を長期間使った形跡がない」という状態であれば、これはさすがに契約を解除し、部屋を明け渡してもらってよいのではないかと思う方も多いのではないでしょうか。(部屋を明け渡してもらったとしても、大家さんがお気の毒に思うくらいです)
実際、下級審の判決は割れていました。
第1審(大阪地裁)では、同条項は違法であるとして差止めを命じる一方、第2審(大阪高裁)では、同条項には「相応の合理性がある」として適法と判断していたのです。

では、そうして経緯も踏まえて、最高裁の判決をみていきましょう。

[PR] 賃貸物件の仲介手数料が半額!

 

■最高裁の判決は、「保証会社の条項は違法」!!

注目の最高裁判決は、なんと消費者契約法に基づいて、条項は違法だとして、条項の使用差し止めを命じる内容でした。
判決の根拠となったのは、消費者契約法第10条。

同法では、「民法などの一般的な規定に比して、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重することで、消費者の利益を一方的に害する条項は無効とする」主旨が定められおり、今回の家賃保証契約の条項はこれに該当するという判断のようです。

もっとも、一部の専門家の分析によると、本件で違法と判断されたのは、“家賃保証会社による“賃貸借契約の解除や建物明け渡しであって、賃貸借契約の当事者たる大家さんが同様の行為をすることの違法性までは必ずしも踏み込んでいない、という見方もあるようです。

著者は法律の専門家ではないため判決への踏み込んだ法解釈は控えますが、いずれにしても、令和の時代にあってなお、理不尽ともいえる入居者保護は継続していると理解してよさそうですね。

■最高裁の判決は、多くの入居者さんにもデメリットになる!?

最後に現役大家としての目線から、今回の判決から感じたことを書いておきたいと思います。

それは、少なくとも実務目線でいえば、今回の判決は大家さんだけでなく、多くの入居者さんに悪影響があるのではないかという点です。

今回の判決について、悪質な家賃滞納や明け渡し拒否に対して、大家さんが取れる手段が減ってしまったのは間違いありません。

多くの大家さんはボランティアをしているわけではありませんから、自衛のために入居審査を厳しくしたり、家賃保証会社に加えて連帯保証人を求めたりといった対策を取る動きに繋がることは避けられないでしょう。

結果として、本来は何の問題もない善良な入居者さんが審査に通らなかったり、必要以上の保証を求められたりとなるケースも今後発生してくるかもしれません。

このように考えると、ごく一部の悪質な滞納者を保護するために、大家さんはもちろん、その他大勢の善良な入居者さんが割を食うことになってしまうわけです。

もちろん、住居はその方の生活基盤を守る砦でありますし、真にやむを得ない理由で滞納してしまったり、長期間連絡が取れなくなってしまったりするケースもあるかもしれません。

そうしたイレギュラーに対するなんらかの救済措置は必要であることは否定しませんが、その責任を大家さんだけ負わせるというのは時代錯誤だと思います。(かつてのように、大地主だけが大家さんをしている時代ではありません)

令和の時代に合わせて、不動産賃貸に関する法整備は見直しすべき時期だと感じています。

RealMediaでは、毎週最新の記事をお届けするメールマガジンを配信しております。
ご希望の方はメールマガジン登録フォームからお申込み下さい。

このエントリーをはてなブックマークに追加

友だち追加

関連記事