資産運用
不動産投資をしていると、物件の管理を管理会社に委託するのが一般的です。特に複数戸の賃貸経営をしているオーナーにとって、入居者対応・設備管理・家賃集金などを日常的に自分でこなすのは現実的ではなく、いわば管理会社は“パートナー”とも呼べる存在です。
その一方で、近年では「管理会社との付き合い方が難しくなってきた」との声も聞かれるようになってきました。かつてのように“依頼すればなんでもやってくれる存在”といった認識は、もはや過去のものになりつつあるのかもしれません。
本稿では、物件管理を委託する「PM(プロパティマネジメント)」の観点から、管理会社との関係性を見直すポイント、そしてこれからの時代にオーナー側に求められる“対人折衝力”について考えていきます。
一般に管理会社への委託業務には、大きく分けて「PM(プロパティマネジメント)」と「BM(ビルマネジメント)」の2種類があります。本稿でご説明するのは、このうちPM業務に関するものです。
PM業務の具体的な委託範囲は、オーナーと管理会社の個別契約で決まりますが、おおよそ「入居者の募集」「賃貸借契約の締結」「集金代行(家賃等の回収)」「クレーム対応」「更新・解約手続き」「退去後の原状回復工事」などをイメージすれば、大きな誤解はないでしょう。
しかし、ここで理解しておくべきは、「管理会社とオーナーは、必ずしも利害が一致するとは限らない」という現実です。むしろ実務においては、“利益相反”の場面も少なくないといえます。
たとえば、設備故障の修理対応。管理会社は、修理業者の手配と見積もりを行い、オーナーに確認のうえ工事を進めますが、その際「原因調査して部分修理する」よりも「丸ごと新品交換」を勧めてくるケースが多々あります。
理由は単純で、その方が早く済むうえ、入居者の満足度も得やすく、管理会社にとっては中間マージン(いわゆる“ピンハネ”)も取りやすいからです。特に管理会社が系列の修理業者しか使わず、他社と比較しないようなケースでは、相場より割高な工事費用が提示されることもあります。これは退去後の原状回復工事でも同様で、「まだ使える設備を再利用する」のではなく、「一律で新品に交換する」提案が繰り返されがちです。
この点、最小限のコストで入居者満足を維持してほしいといった、オーナーの思惑とは明らかな温度差があります。管理会社にとってトラブル対応とは、「なるべく早く終わらせたい面倒ごと」、または「少しでも利益を上げるためのチャンス」と見なされることもあるのです。
こうした現場の実態を理解せず、すべてを鵜呑みにしてしまえば、管理コストばかりがかさみ、利益が削られてしまうリスクもあるのです。
とはいえ、管理会社の対応全てに疑いの目を向け、過剰な口出しをすることも、得策とは言えません。
上手なオーナーほど、管理会社との距離感をうまく取りながら、自分にとっても、そして管理会社にとっても“損にならない”運営を意識しています。
たとえば、見積もりや提案内容には目を通し、適宜フィードバックを返す。現場対応に感謝を伝えながらも、不明瞭な費用については冷静に突っ込む。担当者の仕事を軽んじたり、感情的に対応したりせず、あくまでビジネスパートナーとしての姿勢を崩さない。
連絡頻度も重要なポイントです。業務連絡への返信が早いオーナーは、担当者からの信頼度が高まりやすく、逆に返事がなかなか来ないオーナーは、緊急対応の優先順位を下げられてしまうリスクもあります。
こうした姿勢で接するオーナーは、管理会社側からも「信頼できる相手」と見なされ、結果的に業務の優先順位を上げてもらえることも多くなります。
反対に、管理会社を“下請け業者”のように扱い、細かく命令したり、感情的に責めたりするオーナーは、たとえ契約上は顧客でも、現場からは敬遠される傾向があります。実際、「あのオーナーの物件はもう扱いたくない」と契約解除を宣告されるケースも増えているようです。
こうした背景もあり、最近では「管理会社を選ぶ時代」から、「オーナーも選ばれる時代」へと移行しつつあると言われます。
これまでは、オーナー側が“顧客”として圧倒的に優位な立場にあると考えられてきましたが、近年の人手不足や業務の多様化により、管理会社側も「対応しやすいオーナー」「信頼関係を築けるオーナー」を選ぶようになってきたのです。
もちろん、重要な判断に対してオーナーが主体的に関与する姿勢は大切です。しかしそれが過剰になり、「全部自分で決めるから言うとおりに動け」といった姿勢になってしまえば、管理会社との関係は長続きしません。
求められるのは、管理会社の利益にも一定の配慮を示しつつ、自らも納得のいく経営判断を支える“対人折衝力”です。これはもはや、不動産投資ではなく「不動産賃貸事業」としての意識に近づいていると言えるでしょう。
いかがでしょうか。
管理会社との付き合い方は、これからの不動産オーナーにとってますます重要なテーマになっていきます。
業者を“選ぶ”という目線だけでなく、“選ばれる”存在としてどう振る舞うか。その意識が、物件の収益力や長期的な資産形成に大きな差を生む時代が、すぐそこまで来ているのかもしれません。
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