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老朽化マンション対策!建替え問題への法改正が加速する背景とは!?

老朽化マンション対策!建替え問題への法改正が加速する背景とは!?

老朽化マンション対策!建替え問題への法改正が加速する背景とは!?

先日、分譲区分マンション(以下、「マンション」と書きます)の建替え要件の緩和に関して、区分所有法の改正を法制審議会に諮問予定であることが発表されました。

現在の法令では、マンションの建替えには議決権の5分の4の賛同が必要など、非常に厳しい要件が規定されており、永住を希望するマンション住民の権利保護には有益である一方、マンションの老朽化対策への障害となっている一面も指摘されています。

国土交通省の調査によると、築40年超のマンションは現在103万戸ありますが、10年後には約2.2倍の232万戸、20年後には約3.9倍の405万戸まで拡大する見通しとのこと。

このままでは老朽化したマンションの急増が懸念されるため、マンションの適正な維持管理はもちろんのこと、老朽化が進み維持修繕等が困難なマンションについては、再生(建替え)に向けた取組の強化が喫緊の課題であるといえます。

本稿では、なぜ日本では老朽化したマンションの建替えが進まないのか、今後に向けてどのような法改正の動きがあるのかについて、分かりやすく説明していきます。


■非常に厳しいマンション建替えのルールとは!?

まずは、非常に要件が厳しいとされる、現在のマンション建替えの要件について確認していきましょう。

一般に、マンションの建替えにあたっては、「準備・検討・計画」→「決議」→「実施」の3ステップから構成されます。

まず、「準備・検討・計画」のステップでは、原則としてマンション所有者の代表者から組織される「管理組合」が中心となって(実務上は、管理組合をサポートするマンション管理会社や専門コンサルタントらと協同して)、建替えの必要性確認、デベロッパーの選定、工事費用の算定、マンション住民への説明会招集といった事項を取り纏めることになります。

そして、「準備・検討・計画」を経たのちに、マンション建替えの「決議」を行うわけですが、ここでの必要要件は、冒頭でも触れたとおり、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成です。

この賛成割合は法令(区分所有法)に明記されており、これが得られないと「実施」のステップに進むことはできません。

「決議」において、5分の4以上の賛成が必須であることが、日本でマンション建替えの進まない最大の要因となっています。


■建替えの合意を阻む「3つの問題」とは!?

では、マンション建替えの決議にて、5分の4以上の賛成を得るのがどれほど難しいのか、少し深掘りしてみます。

もちろん、マンションごとに事情は様々でしょうが、本稿では代表的な「3つの問題」から考えていきます。

①資金面の問題

当然ながら、建替えには多額の資金が必要となりますが、多くマンション(管理組合)では建替え費用を賄うだけの積立金は用意できていません。

建替え費用の不足分は、金融機関からの借入やマンション住民から集金することになりますが、この費用負担の是非や可否について住民内でも意見が割れてしまいます。(建替え期間中の仮住まいの住居費や引越し代など、建替え工事費以外にも多額の費用がかかります)

②世代間ギャップの問題

建替えを検討するということは、新築時から40年、50年あるいはそれ以上の時間が経過していますから、新築時から居住している方は高齢になっている方が多いもの。

その一方、中古物件として購入した方のなかには若い方もいるはずで、住み慣れた環境からの変化、仮住まいへの転居に対する負担感、将来的な資産価値への期待など、世代によって価値観のギャップが大きくなることは容易に想像できますね。

③所有者不明の問題

前述したとおり、建替えの決議では、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要です。

ただでさえ、この合意形成は至難ですが、実際には相続などで現在の所有者が不明、あるいは連絡難の方が一定数発生することは避けられません。

決議では、賛成を得られなければ反対として扱われてしまうため、所有者不明・連絡難の数によっては、実質的に5分の4の賛成要件が不可能となってしまうこともあります。


このような問題が重なるため、マンション建替えの決議において、5分の4以上の賛成を得ることは非常に難しいとされているのです。


■必要なマンション建替えの促進に向けた法改正の動きとは!?

とはいえ、冒頭にも書いたように、これから老朽化したマンションがどんどん増えてしまうことは確実ですから、国としても何らかの対策は急務と考えていたようです。

直近の動きとしては、令和2年から「マンション管理適正化法」「マンション建替円滑化法」の法改正が順次行われています。

これらの法改正には、マンションの管理組合のサポートや建替え時の容積率特例やマンション敷地売却の対象拡大などが盛り込まれており、必要なマンション建替えの促進に一定の効果が期待されています。

たとえば、マンションの容積率が緩和されれば、建替えるマンションを従来よりも高層に作り替えることができるため(従来よりも部屋数を多く作れるため)、容積率緩和分の部屋を新たに分譲して、それを建替えの資金問題に充てることが可能となります。

その他の法改正内容は以下サイトに詳しく纏まっていますので、関心のある方は是非ご覧ください。

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<参考>令和2年に改正されたマンション管理適正化法及びマンション建替円滑化法に関する情報

【出典】国土交通省ホームページ『改正マンション法関連情報』より
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そして、冒頭で触れた区分所有法改正の法制審部会への諮問は、さらなるマンションの建替え促進に向けた動きの一つです。

報道によると、「建て替え決議の多数決要件を4分の3かそれ以下に引き下げる案」や、「裁判所など公的機関が認めることを条件に、所有者不明の区分所有者を意思決定から除外する案」などが検討されるとあり、直近の法改正と合わせて運用されることで、さらなる効果が期待されます。

マンションの老朽化は、これから本格化するであろう社会問題です。

マンション住民の権利や心情には十分配慮したうえで、現実的な法整備がなされることを期待しています。

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