保険年金

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本当に大丈夫!? 22年度からの年金制度改正を読む!

本当に大丈夫!? 22年度からの年金制度改正を読む!

本当に大丈夫!? 22年度からの年金制度改正を読む!

2020年5月に成立した「年金制度改正法」を覚えていらっしゃるでしょうか?
改正の本丸は、以前別の記事(※)でも触れた、2022年10月からの社会保険の適用範囲の段階的拡大とされていますが、それに先行して2022年4月より年金受給の仕組みに大きな変更が実施される予定です。

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今回の制度改正は、「一年でも長く現役を続けてほしい」「一人でも多く現役を続けてほしい」といったメッセージ性を強く感じるもので、長期的な年金制度の運用に対する不安や不信を抱く方も少なくないと思います。
元々、年金の受給開始年齢は55歳でした。
それが段階的に60歳となり、65歳となってきた経緯があるわけですが(正確にいえば、現在は65歳への引き上げの移行期間中です)、今回の制度改正を踏まえると、いよいよ70歳への引き上げが現実味を帯びてきた、という声さえ聞こえてきます。
では、2022年4月に実施予定の年金制度の変更とは、どんな内容なのでしょうか。
本稿では、変更点のポイントについて、従前の制度との比較を交えながら分かりやすく説明していきます。

■在職老齢年金制度の見直し

1つ目は、「在職老齢年金制度の見直し」です。
従前より、60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象として、年金受給額と賃金(正確には老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額)に応じて、年金受給を減額または停止する、「在職老齢年金制度」というものがあります。

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<参考>日本年金機構 在職中の年金
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在職老齢年金制度には賛否あり、ときどきテレビ番組やSNSでも話題になっていますね。
退職前から年金が受給できる点を評価する声がある一方、「せっかく働いても年金が減らされるなんて理不尽だ」といった声も少なくないようです。
現行制度では、年金の減額(または停止)の条件は年齢によって異なっており、「65歳未満は28万円」「65歳以後は47万円」が基準となっています。
今回の見直しでは、この基準に変更が入り、「65歳未満・65歳以後のいずれも47万円」に統一されることになりました。

■在職定時改定の新設

2つ目は、「在職定時改定の新設」です。
前提として、65歳以上で厚生年金保険料を納付している人は、保険料を払った分の年金額が増額されます。
しかし、その増額(年金受給額の見直し)のタイミングは、退職等により厚生年金被保険者の資格を喪失したときまで待たねばなりませんでした。
今回の「在職定時改定の新設」によって、毎年10月に段階的に年金受給額の見直しを行い、働きながら年金額を増額することができるようになります。

■受給開始時期の選択肢の拡大

3つ目は、「受給開始時期の選択肢の拡大」です。
前述したように、現在の年金受給開始年齢は65歳です。
しかし、現行制度においては、希望すれば60歳から70歳の間で自由に受給開始時期を選ぶことが出来るようになっており、65歳より早く受け取り始めた場合(繰上げ受給)には減額(最大30%減額)した年金を、65歳より遅く受け取り始めた場合(繰下げ受給)には増額(最大42%増額)した年金がそれぞれ受給されます。
今回の「受給開始時期の選択肢の拡大」によって、繰下げ受給の受給開始時期の範囲70歳→75歳が拡大され、増額も最大42%→84%に拡大します。
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<参考>年金受給額の増減率

【出典】厚生労働省ホームページ
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■年金制度は本当に大丈夫なのか!?

かねてより、年金制度の破綻や財源枯渇を懸念する声は根強くありますが、本稿でご説明した3つの変更点についても、「高齢者が現役を続けるデメリットを減らしました」「年金受給を遅くするメリットを拡大しました」といった主旨のものばかり。
もちろん、元々働く意欲のある高齢者の方や、少しでも現役を長く続けて生涯賃金を増やしたい方などには朗報でしょうし、年金受給の選択肢が広がること自体は悪いことではありません。
しかし・・・。
比較的最近まで60歳が年金受給の開始年齢だったことを思えば、65歳どころか、70歳、果ては75歳まで現役を続けることを推奨されるかのような制度変更ですから、歓迎の気持ちよりも、年金財政の危機を改めて感じずにはいられません。
実際、そうした不安の声は多いようで、年金制度改正法を説明する厚生労働省のホームページ内「よくある質問」に、『Q.少子高齢化が進行すると、若い世代の年金額は減ってしまうのではないでしょうか?』といった質問が掲載されているくらいです。。。
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<参考>厚生労働省ホームページ
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ちなみに、上記Qへの回答としては、『年金制度は、5年に一度、健康診断のような形で行う「公的年金の財政検証」によって100年先までの見通しを検証しており、・・・(中略)・・・年金制度が破綻している、若い世代は年金を受け取れない、といったことは全くありません』と書かれています。
果たして、この言葉を信用してよいのでしょうか?
今回の制度改正は年金受給年齢70歳への引き上げの事前準備ではないと言い切れるのでしょうか?
読者の皆さんは、どうお感じになりますか!?

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