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FPと考える! 「預貯金は元本保証だから安心」は本当か!?

FPと考える! 「預貯金は元本保証だから安心」は本当か!?

FPと考える! 「預貯金は元本保証だから安心」は本当か!?

突然ですが、あなたは、「預金」と「貯金」の違いをご存じでしょうか?
日常生活ではあまり意識しないかもしれませんが、「預金」とは、銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫などの金融機関にお金を預けること、「貯金」とは、ゆうちょ銀行・JAバンクなどの金融機関にお金を預けることを差しています。

お金を預けるという同じ行為なのに呼び名が違うのはややこしい話ではありますが、そのルーツは明治時代にまで遡ります。
日本で最初の銀行は、1873年(明治6年)に設立された第一国立銀行(現みずほ銀行)で、その後、続々と国立銀行が設立され、1882年(明治15年)に中央銀行である日本銀行が設立されるに至ります。
当時、銀行を利用していたのは、主に都市部の企業・商人と言われており、「銀行は事業のために融資を行い、事業の利益は銀行に預け入れる」というサイクルが構築されていきました。これが「預金」のルーツとされています。

一方、「貯金」のルーツは、1875年(明治8年)に始まった、ゆうちょ銀行の前身にあたる郵便貯金です。
一説によると、江戸時代に多くの農民は自給自足に近い生活を送っていたこともあり、当時の一般人には、「お金を貯めておく」という習慣があまりなかったそうです。
そこで通貨制度の浸透と貯蓄による国民生活の安定、そして一般人から集めたお金の有効活用などを目的に、旧大蔵省主導で郵便貯金を推奨したとされています。

このように、元々は異なる経緯から「預金」と「貯金」は始まりましたが、ゆうちょ銀行が民営化された現在、一般個人の方が「お金を預ける」という意味では両者の実質的な違いは限定的で(預金限度額など一部には違いも残っていますが)、一般的な認識としては、「預金=貯金=預貯金」という方が多いのではないのでしょうか?
やや前置きが長くなりましたが、本稿ではそんな明治時代から続く「預貯金」について、令和時代ではどのように付き合っていくべきなのか、FPの目線から解説していきます。


■日本国民には、いまなお預貯金は大人気!

毎年、夏と冬の時期になると、様々な調査機関が「ボーナスの使い道は?」というアンケート結果を公表しています。
私の知る限り、ほとんどのアンケートで不動の一位は「預貯金」です。(関心のある方は、「ボーナスの使い道 調査 2021」などのキーワードでググってみてください)
やはり明治初期から連綿と続く「預貯金」に対する日本国民の信頼性は圧倒的なのだな、と痛感せずにはいられません。
では、現在においても、預貯金がこれほど支持される理由は何でしょうか。
私がFPとしてご相談を受けているなかでは、「預貯金は元本が保証されている」という点を挙げる方が圧倒的に多いと感じています。
実際、預貯金は原則として預金保険制度(ペイオフ)の対象となり、「元本1,000万円+その利息」は保護の対象となります。その意味では、「少なくとも1,000万円までは元本保証」という解釈は間違ってはいません。

■「預貯金は元本保証だから安心」は本当か!?

しかし、実は、預貯金は本当の意味での元本保証にはなっていない、それどころか逆に損をしている可能性も決して低くはないと言ったら、驚かれる方は多いのではないでしょうか?
たしかに、預貯金では「額面」は元本保証です。ある金融機関に100万円を預金したら、預金した100万円とその利息は全額保証されています。
しかし、100万円の価値、つまり100万円で買えるもの・できることは常に変動しています。
たとえば、自動販売機での缶ジュースの価格は、かつては100円でしたが、いまは120円に値上げされています。20円が値上げされた分、お金の価値が下がったということです。
参考までに2021年7月現在、メガバンクの普通預金金利は0.001%、100万円を1年預けても10円の利息にしかなりません。
ご自身が将来的に買う予定のもの・する予定のことが、僅かでも物価上昇の傾向にあるとすれば、この利息では追いつくはずもありません。
「額面」だけが保証されていても、実質的なお金の価値はどんどん低下してしまうことになるのです。

日本の物価上昇はほぼ横ばいではあるが・・・

もっとも、マクロ経済で見た場合、近年の日本では、かつてのような大幅な物価上昇は起きていません。
総務省統計局が公表している、2015年基準の消費者物価指数の前年比(年平均)では、2018年1%、2019年0.5%、2020年0%となっており、微増または横ばいの状況が続いています。

【出典】https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html

しかし、全体傾向が横ばいであっても、局所的には物価上昇の傾向が顕著な業種もあります。
たとえば、家計支出のなかでも最大規模の金額となるであろう住宅です。国土交通省が令和3年6月30日に公表した「不動産価格指数(住宅)」では、住宅とりわけマンションの価格上昇が顕著な結果となっています。

【出典】https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html

もし、この上昇傾向が続くうちに自宅の購入や買い替えを検討しているとすれば、たとえ全体傾向が横ばいだったとしても、預貯金によってお金を寝かせている間に、その実質的な価値は下がってしまう可能性は大きいといえるでしょう。
このように、預貯金の元本保証とはあくまでも「額面」のみで、その本質的な価値に対する保証ではありません。
今後日本全体が物価上昇の局面に移行したり、そうでなくともご自身が予定する高額支出の業種が物価上昇しているようであれば、特に注意すべきといえるでしょう。
「預貯金は元本保証だから安心」は必ずしも正しいわけではありません。
場合によっては、「投資」「資産運用」にチャレンジしてみるとか、購入時期の見直しを検討するなども含めて、資産管理を考えていただければと思います。

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