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今さら聞けない! 基本中の基本「共益費」設定のメリット・デメリット!

今さら聞けない! 基本中の基本「共益費」設定のメリット・デメリット!

今さら聞けない! 基本中の基本「共益費」設定のメリット・デメリット!

不動産投資において、大家さんとしてはなるべく満室を維持したいもの。

そうはいっても、入居者さんの退去理由は様々です。

物件の不具合を放置したようなケースは論外としても、入居者さんの転勤や結婚(離婚)、卒業や転職など、大家さんにはどうにも出来ないケースも少なくありません。

そうなると、早期に満室経営に返り咲くためには、次の入居者募集が重要となることは明らかです。

入居者募集のノウハウは、「再現性の高いもの」「専門性が要求されるもの」「高額なお金がかかるもの」など多岐に渡りますが、昔からある、もっともお手軽にできる工夫といえば、「共益費(管理費)」の設定です。

しかし、そのお手軽さゆえか特に入居者募集の経験の少ない大家さんのなかには、共益費(管理費)の設定による、メリット・デメリットを正しく理解していない方も増えているそうです。

本稿では、入居者募集の基本中の基本ともいえる、共益費(管理費)の設定について、ご説明していきます。

 

共益費(管理費)とはなにか?

共益費(管理費)とは、賃貸住宅において、共用部分(廊下・階段・エレベータなど)の使用やその維持管理のため、入居者さんが家賃とは別に、大家さんに毎月支払うお金のことです。

厳密には、共用部分の使用や維持管理に要する費用を共益費、それ以外の付帯費用(事務処理代や物件の租税公課など)も広く含むのが管理費とされていますが、賃貸の実務では両者に差異はなく、実質的に「共益費=管理費」として扱われることが多いようです。

また、不動産投資用に区分マンションを購入すると、大家さんは、建物管理会社や集金代行業者に「管理費」を毎月支払うことになるケースが多いのですが、実際に大家さんが支払う管理費と、入居者さんにお支払いいただく共益費(管理費)を同じ金額にする必要はありません。

多くの場合、共益費(管理費)という言葉は形式的なもので、実際には入居者募集の工夫の一つとして、募集条件に割安感を演出する目的で、共益費(管理費)が設定されています。

 

共益費(管理費)を設定するメリット

では、家賃と共益費(管理費)を、わざわざ別に設定することのメリットはなんでしょうか。

大家さんのメリットは、前述したとおり、募集条件に割安感を演出できる点です。

たとえば、家賃9.5万円と設定したい場合、「家賃8.9万円、共益費0.6万円」とすることで、インターネット検索等で「9万円以下」で絞り込まれる場合にも、入居者さんの目に触れることになりますね。

もっとも、最近では共益費込みの総額で検索できるサイトも増えていますし、当然ながら、多くの場合は物件そのものの市場価値やその他入居条件(入居時期やフリーレント等)も含めて比較検討されますから、これだけで入居率が劇的に改善するというものではありません。

それでも、多くの入居者さんがインターネットで上限家賃を設定して検索していることを前提とすれば、「検討の土台に乗れる機会を増やす」という意味で、一定の効果はあるといえます。

 

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共益費(管理費)を設定するデメリット

上記メリットのバーターとして生じるデメリットも、予め理解しておきましょう。

「大家さん」「賃貸の仲介不動産業者」「入居者さん」のそれぞれの目線で見ていきます。


・大家さんの目線

先ほどの募集事例でいえば、「家賃9.5万円」と「家賃8.9万円+共益費0.6万円」では、一見すると大家さんの収入は同じに見えます。

しかし、「礼金・敷金」「更新料」といった毎月の家賃以外に目を向けると、大家さんの収入は減ってしまうことになります。

なぜなら、「礼金・敷金」「更新料」は、共益費(管理費)を除く「純粋な家賃のNヵ月分」として設定することが原則だからです。

先ほどの募集事例で、たとえば「礼金・更新料」が各1ヵ月分、2回の更新があったとすれば、下記のとおり、大家さんの収入は1.8万円下がってしまうのです。(敷金は退去時に残額の返還義務のある預り金の性質を有するため、ここでの計算からは除外しています)

<家賃9.5万円>
 礼金 9.5万円
 更新料 19万円(9.5万円×2回)
 計 28.5万円

<家賃8.9万円、共益費(管理費)0.6万円>
 礼金 8.9万円
 更新料 17.8万円(8.9万円×2回)
 計 26.7万円

∴差額1.8万円(28.5万円-26.7万円)

なお、逆に入居者募集時に大家さんの支出となる広告料も、原則として共益費(管理費)を除く「純粋な家賃のNヵ月分」として設定するため、礼金以上に広告料の支払いがある場合、上記デメリットの一部は緩和されることになります。(礼金や広告料の相場は地域差が大きいため、ご自身の収益物件のエリア事情を確認するのがよいでしょう)


・賃貸の仲介不動産業者の目線

通常、入居が決まると、仲介不動産業者は、入居者さんから家賃の1ヵ月分の仲介手数料を成功報酬として受け取ります。(ルール上は、「大家さんと入居者さんから合計で家賃1ヵ月分以内」となっているのですが、多くのエリアでこうした商慣習となっています)

そして、この仲介手数料も、共益費(管理費)を除く「純粋な家賃のNヵ月分」とされているのです。

さらに、広告料の商慣習のあるエリアだと、前述したとおり、大家さんから受け取れる広告料も減ってしまいますので、仲介不動産業者としては、「共益費分×2」の収入が減ってしまうことになります。


・入居者さんの目線

賃貸物件によって、「家賃のみ」「家賃+共益費(管理費)」のパターンが混在していることで、月間の総支払額を比較しづらくなるのはデメリットといえます。

しかし、前述した「大家さん」「賃貸の仲介不動産業者」のデメリットの相対として、「敷金・礼金」「更新料」「仲介手数料」は、共益費分ずつ安くなりますので、実は入居者さん目線では、メリットの方が大きいと考えることも可能です。

 

共益費(管理費)の設定での注意点!

せっかく大家さん(あるいはパートナーである仲介不動産業者)の取り分を減らしてまで、共益費(管理費)を設定するわけですから、しっかり入居者さんにそのお得感が届くようにしたいものです。

それには、仲介不動産業者とのコミュニケーションが何よりも重要です。

共益費(管理費)の条件は仲介不動産業者と十分なコミュニケーションを取ったうえで設定しましょう。(少々の収入減よりも早期の入居者確保に繋がると前向きに捉えてもらえるケースも多いと思いますが、万一にでも、仲介不動産業者に「面倒な大家」「儲からない客」と思われては元も子もありません)

また、共益費(管理費)と「礼金・敷金」「更新料」「仲介手数料」の関係は、殆どの入居者さんはご存じないはずです。

仲介不動産業者とコミュニケーションを取りながら、「問い合わせがあった際にPRしてもらう」「募集図面に初期費用を記載してもらう」など、相談してみるのもよいでしょう。

 

まとめ

・家賃の一部を「共益費(管理費)」とすることで、入居者募集に割安感を演出できる!(特にネット検索対策としてやっておきたい!)

・しかし、大家さんだけでなく、ビジネスパートナーである賃貸の仲介不動産業者の収入が減るというデメリットに注意!

・入居者さんの早期確保には、仲介不動産会社の理解と協力が必要!しっかりコミュニケーションを取りながら対応しよう!

 

ファイナンシャルプランナー 中川理
 

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