資産運用
ここ数年、日本では歴史的な円安が続き、お金や資産運用への関心が一気に高まりました。2024年に始まった新NISAをきっかけに投資を始めた方も多く、「円安だから海外資産を持った方がいい」「円だけでなくドル建ての資産も増やした方がいい」といった話を耳にする機会も増えています。
一方でこのところは、日本銀行の金融政策や政府による為替介入を背景に、為替相場が短い期間で大きく動く場面が目立ちます。2026年4月末から5月にかけては、円を買ってドルを売る介入が1か月で11兆7,349億円と過去最大の規模になり、さらに7月30日・31日には日本と米国が足並みをそろえて介入する異例の展開もありました。ニュースで「為替介入」という言葉を聞いても、自分の資産にどんな影響があるのか、円高になったら海外資産の評価額が下がってしまうのか、不安を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こうした急な相場の変動を目にすると、この先は円高になるのか、円安はもう終わりなのかと予想したくなります。ただ、本当に大切なのは相場の方向を当てることではなく、どちらに動いても慌てずに済む家計と資産の形を整えておくことです。今回は、為替介入の基本的な仕組みから、円安・円高それぞれが家計と資産運用に与える影響、そしてこれからの時代に考えたいお金の持ち方について解説していきます。
まず、為替介入の基本的な仕組みを見ておきましょう。為替介入(正式には「外国為替平衡操作」といいます)は、急激な円安や円高が経済に与える影響を和らげるために、政府と日本銀行が為替市場で円や外貨を売買することを指します。実務としては、財務大臣の判断のもとで日本銀行が売買を行う形をとります。
たとえば急激な円安が進むと、海外から輸入している食品やガソリン、電気料金などが値上がりし、私たちの生活にも直接響きます。そこで政府は円を買ってドルを売り、円安の勢いを抑えようとします。これが「円買い介入」です。
ただし、為替介入だけで長期的な相場の流れを変えるのは簡単ではありません。実際に、2026年4月末から5月にかけての介入では、1ドル160円台後半だった相場が一時155円近くまで戻ったものの、その後は再び円安方向へ動き、5月末には159円台で取引を終えています。為替相場は日本と海外の金利差、景気の動き、インフレ率、世界情勢といったさまざまな要因が重なって動いているため、介入で一時的に円高へ振れても、また元の方向へ戻る可能性があるのです。
このように、未来の円安・円高を予想し続けることはプロでも難しいものです。資産運用では相場を当てにいくよりも、どちらの環境になっても対応できる資産の持ち方を整えておくことが大切になります。
為替相場がどちらに進んでも対応できるようにするには、どの資産がどの為替環境に強いのかを把握しておく必要があります。
円安が進むと、全世界株式や米国株式、外国債券などの海外資産は、為替の影響で円に換算した評価額が上がりやすくなります。仮に1万ドル分の米国株式を持っていた場合、1ドル150円なら円換算で150万円ですが、160円になれば160万円と、株価が変わらなくても10万円分評価が上がる計算です(1万ドル×160円-1万ドル×150円=10万円)。
ドル建て保険などの外貨建て保険も、為替の影響を受ける代表的な商品です。保険料をドルで定め、円に換算して支払うタイプでは、円安になると毎月の保険料負担が重くなります。一方で、死亡保険金や解約返戻金(途中で解約したときに戻ってくるお金)もドル建てで管理されているため、円換算では保障額や資産価値も同じように増えています。「円安で保険料だけ高くなった」と感じる方もいますが、受け取る側の金額も円換算では増えている、という点は知っておきたいところです。
さらに外貨建て保険は、為替だけでなくその通貨の金利環境にも影響を受けます。近年は海外の金利が高い状況が続いたことで、以前より予定利率(保険会社が契約者に約束する運用利回り)が高い商品も増え、円安と金利上昇の両方が商品の魅力を左右してきました。
反対に円高が進むと、海外資産の円換算評価額は一時的に目減りする可能性があります。先ほどの例でいえば、1万ドルの資産は160円のとき160万円でも、150円になれば150万円に見えるわけです。ただ、これも必ずしも悪いことだけではありません。
たとえば外国株式ファンドなどを毎月一定額で積み立てている人にとっては、円高や基準価額(投資信託の値段)の下落は、同じ金額でより多くの口数を買えるタイミングでもあります。一定額を続けて買うことで平均の購入単価をならしていく考え方をドルコスト平均法と呼び、長期で見ればプラスに働く可能性があります。また、海外旅行や海外留学、輸入品などは円高の恩恵を受けやすく、日々の生活コストが下がるという面もあります。
資産配分については、「円安だから海外資産だけ」「円高だから円預金だけ」という考え方ではなく、お金の目的に応じて円資産と外貨資産をバランスよく組み合わせることが大切です。
円安局面が長く続いたことで、「円安だから投資をする」「円高になったら一旦積立をやめる」といった判断をしがちです。実際のFP相談でも、円高になったら積立をやめた方がよいか尋ねられることがあります。しかし資産運用は本来、為替の方向を当てるためのものではありませんし、予想し続けることも簡単ではありません。相談の場では、為替相場の動きにかかわらず、目的や使い道に応じた資産配分と、リスクを抑える方法をお伝えしています。
たとえば、今の資産が円預金など円資産に偏っている人は、外国株式や外国債券、外貨建て保険などを一部組み合わせることで、円安への備えを持つことができます。ゴールドも円安やインフレへの備えとして活用されることがありますが、価格自体が上下する点には注意が必要です。
逆に、海外資産の割合が高い人は、円預金や個人向け国債などの円資産、あるいは為替ヘッジあり(為替の変動による影響を抑える仕組みが組み込まれたタイプ)の投資信託などを組み合わせることで、急な円高による円換算評価額の下落を和らげる方法があります。
これからも為替相場は動き続けます。どちらか一方を予想して資産を集中させるのではなく、お金の目的や使う時期に応じて、円資産と海外資産を分けて持っておくこと。これからの資産運用では、為替を読む力よりも、為替が動いても続けられる仕組みを作る力の方が、より重要になっていくのではないでしょうか。
為替介入のニュースを見て、「今の資産の持ち方でよいのだろうか」と気になった方もいらっしゃると思います。円安と円高のどちらが来ても対応できるかどうかは、相場の予想ではなく、今の資産が円と外貨のどちらにどれだけ偏っているかを一度確認するところから見えてきます。
ご自身の家計や保有資産のバランス、外貨建て保険や積立投資の位置づけについて整理したいときは、FPなど専門家に相談しながら考えていくのも一つの方法です。相場が動いても続けられる形を、ぜひ一緒に見つけていきましょう。
まずは30秒、ご自身のタイプを知ることから
円資産と外貨資産をどのくらいの割合で持つべきかは、年齢や家族構成、いつそのお金を使うかによって変わります。簡単な診断で、ご自身に合った考え方の方向性を確認いただけます。
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