資産運用
金利上昇局面に入ったと言われるなか、金融の世界では一見すると逆行するような動きも見られます。
それが、「証券担保ローン」を活用する人が一定数いるという話です。
ローンと聞くと、「できるだけ借りない方がいい」「お金があるなら借金は不要」と考える方が多いでしょう。ましてや、資産に余裕があるはずの人が、あえて金利を払ってまでお金を借りる――直感的には、理解しにくい選択に映るかもしれません。
しかし、資産の持ち方やお金の使い方を少し引いて眺めると、この行動にはそれなりの理由があります。
本稿では、証券担保ローンの基本的な仕組みを整理したうえで、なぜ一部の資産保有者がこの選択をするのか、そしてその是非や注意点について考えてみます。
証券担保ローンとは、株式や投資信託、債券などの金融資産を担保にして資金を借りるローンです。担保に入れた証券は、原則として売却せずに保有を続けることができ、運用そのものは継続されます。
不動産を担保にしたローンと比べると、証券担保ローンは手続きが比較的簡便で、資金使途の制限も緩やかなケースが多いのが特徴です。
短期間で資金を用意したい場合や、売却したくない資産がある場合に、柔軟な資金調達手段として位置づけられています。
一方で、担保となる証券の価格は日々変動します。
相場が下落すれば、担保価値が目減りし、追加担保や返済を求められる可能性もあります。
証券担保ローンは、あくまで「価格変動リスクを前提としたローン」であり、安定性は不動産担保ローンほど高くありません。
この仕組みを理解したうえで使うことが、大前提になります。
証券担保ローンを利用する人の多くは、必ずしも多額の現金を手元に置いているわけではありません。むしろ、資産の大半を株式や投資信託などの金融資産で保有し、現金比率は意図的に抑えているケースが少なくありません。
その理由の一つは、現金そのものが資産としては効率が低いからです。
現金は利回りをほとんど生まず、インフレ局面では実質的な価値が目減りします。物価が上がるほど、現金を多く持つこと自体がリスクになる場面もあります。
そのため、長期的な資産形成を重視する人ほど、現金を最小限に抑え、成長性のある資産に振り向ける傾向があります。
こうした資産構成を前提にすると、「必要なときに現金が足りない」という状況は、必ずしも不自然ではありません。
そこで出てくるのが、運用益が借入金利を上回ると見込めるなら、資産を売らずに借りた方が合理的ではないか、という考え方です。
金利は上昇していますが、それでも市況によっては、一定の運用益を期待できる局面があります。資産を売却してポジションを崩すより、ローンを使って一時的に資金を調達する方が、全体として有利になるケースもあるのです。
また、資産を売却せずに済むことで、売却益に対する課税を先送りできる点も見逃せません。長期投資のポジションを維持できるため、相場環境が良い局面での複利効果を途切れさせずに済むという側面もあります。
こうした税務面・運用面の理由も、証券担保ローンが選択肢として検討される背景の一つです。
もっとも、証券担保ローンは決して万能ではありません。
資産価格が想定以上に下落すれば、追加担保や返済を求められ、最悪の場合は不利なタイミングで資産を手放すことにもなりかねません。精神的な負担も小さくなく、相場変動に耐えられるかどうかは、人によって大きく差が出ます。
こうしたローンが成立するのは、資産全体に十分な余裕があり、最悪のシナリオを想定したうえで行動できる人に限られます。価格変動を「一時的なもの」と受け止められるリスク耐性がなければ、借金はたちまち足かせになります。
証券担保ローンの本質は、借金を増やすことではありません。リスクを管理できる人が、資産を売却せずに選択肢を広げるための手段にすぎません。
借金は常に悪だ、という単純な話ではありませんが、借金が武器になる条件は、思っている以上に厳しいという点は強調しておく必要があります。
いかがでしょうか。
証券担保ローンは、誰にでも勧められるものではありませんし、安易に使うべき商品でもありません。相場の変動に耐えられない人にとっては、かえってリスクを拡大させてしまう可能性もあります。
ただ一方で、「お金があるのに借りる人がいる」という現象は、決して矛盾ではないことも見えてきます。現金を多く持つことが必ずしも安全とは言えず、資産の置き場所や時間軸によって、合理的な選択が変わる場面もあるからです。
借金は、生活を圧迫するもの、避けるべきもの――
そうしたイメージが強いのは自然なことですが、すべての借金が同じ性質を持つわけではありません。リスクを理解し、引き受ける覚悟があり、最悪の事態まで織り込んだうえで使われる借金は、時に資産運用や資金戦略の「選択肢」を広げる役割を果たすこともあります。
金利が上がる時代だからこそ、「借りるか、借りないか」という二択ではなく、どんな条件なら借金が成立するのか、どこから先は成立しなくなるのかを考える視点が、より重要になっているのではないでしょうか。
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