資産運用
住宅ローンといえば、長らく最長35年が一般的でした。
しかし近年、「50年ローン」という超長期型の住宅ローンが注目を集めています。PayPay銀行、SBI新生銀行、イオン銀行などを中心に、「月々の返済がもっとラクに」「若いうちに無理なく持ち家を」といった広告が積極的に展開されるようになりました。
背景には、住宅価格の高騰と家計負担の限界があります。
共働きでも手が届かない物件が増える中、「購入時期を遅らせるよりも、期間を延ばして買う」という発想が現実的な選択肢になりつつあるのです。
さらに、定年の引き上げやシニア雇用の拡大によって、「70歳を超えても働き続ける」ことが珍しくなくなりました。
人生100年時代――。長寿命化と労働期間の延伸が、住宅ローンの常識を静かに塗り替えつつあります。
では、50年ローンは果たして“リスク”なのか、“柔軟な選択肢”なのか。
本稿では、制度の背景からメリット・デメリット、そして向いている人と向いていない人の特徴まで整理していきます。
50年ローンの最大の特徴は、月々の返済額を大幅に抑えられることです。
たとえば3,000万円を借りる場合、35年ローンでは毎月約8万5,000円。これを50年に延ばすと約6万4,000円に下がり、毎月2万円以上の差が生まれます(年利1%想定)。
また、返済期間が長い分、団体信用生命保険(団信)の保障も長期化します。返済中に万が一のことがあっても、残債は保険で完済。長期ローン=不安というイメージとは裏腹に、「家族に負債を残さない安心感」という側面もあります。
さらに、キャッシュフローを柔軟に設計できるという点も見逃せません。
返済額を抑えることで、育児・介護・教育など多様なライフイベントに対応しやすくなります。家計によっては、抑えた差額を投資に回して老後に備えたり、副業や自己研鑽に活用したりといったケースもあるでしょう。
「家にすべてを注ぎ込む時代」から、「家と人生のバランスを取る時代」へ――。50年ローンはその象徴的な存在といえます。
もちろん、デメリットもあります。
まず、支払総額は確実に増えるという現実です。
同じ3,000万円でも、35年では約3,560万円、50年では約3,810万円(年利1%想定)と、支払総額は約250万円の差になります。(金融機関によっては、金利を0.1%前後上乗せすることもあり、実質的な負担差はさらに広がる場合もあります)
次に注意したいのは、返済期間が長いほど、人生の変化に影響を受けやすくなるという点です。
50年という期間の中には、転職や出産、子育て、介護、病気など、さまざまなライフイベントが訪れます。ローンの返済は毎月変わらず続きますが、家計の状況や働き方、健康状態は同じではいられません。
つまり、“長く返すこと”そのものが問題なのではなく、“長い間に何が起きても返し続けられるか”が問われるのです。
また、住宅そのものの資産価値の減少も避けられません。
50年というスパンの中で建物は老朽化し、設備更新やリフォーム費用も必要になります。「ローンは残るのに家は古くなる」という状況になれば、実質的な純資産は目減りしていくことになります。
このように、50年ローンは“家計にゆとりを生む仕組み”であると同時に、“長期的な変化に耐える計画性”を求められる仕組みでもあります。柔軟に使えば人生設計の武器になりますが、見通しを誤れば老後の負担を増やすリスクにもなりかねません。
では、50年ローンを選ぶべき人と避けるべき人は、どのように違うのでしょうか。
向いているのは、あえて「余力を作るため」に選ぶ人です。
たとえば、35年ローンでも十分に返済可能な安定収入があり、金利や総支払額を理解した上でキャッシュフローを最適化できる人。返済を抑えた差額を投資や教育費、老後資金に振り分け、資産形成全体の中で住宅ローンを位置づけられる人です。
また、不動産の資産価値や市場動向を読み、将来的な売却や住み替えの判断ができる“目利き力”のある人にも向いています。
一方で、向いていないのは、「35年ローンでは返済が厳しく、延長で“帳尻合わせ”をしている」人です。
金利変動や総返済額の増加リスクを理解しないまま契約し、結果的に老後の負担を先送りしてしまう。また、資産価値の低い物件を選んでしまうと、いざという時に売却もままならず、「長く返しても資産が残らない」という事態にもなりかねません。
つまり、50年ローンは“余裕を生むための戦略”にも、“将来を苦しめる延命策”にもなり得ます。違いを決めるのは、返済期間ではなく、その期間をどう活かすかという姿勢です。
いかがでしょうか
50年ローンは、住宅価格の高騰と働き方の変化に対応する“時代の産物”といえます。月々の返済負担を抑えることで家計に余裕を生み出す一方、支払総額の増加や老後の不確実性といったリスクも抱えています。
重要なのは、「返済期間を延ばせる」ことではなく、「延ばした期間をどう活かすか」。教育・介護・老後資金――長い人生の中で必要な支出をどう配分するかを見据えたうえで、住宅ローンを“戦略的に使う”視点が求められます。
50年という時間を「負債の長期化」にするのか、「人生設計の柔軟化」にするのか。その分かれ目は、あなた自身の家計力と判断力にかかっているといえます。
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