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敷金・礼金ゼロは本当にお得?――ゼロゼロ物件の“からくり”と注意点

敷金・礼金ゼロは本当にお得?――ゼロゼロ物件の“からくり”と注意点

敷金・礼金ゼロは本当にお得?――ゼロゼロ物件の“からくり”と注意点

そろそろ不動産賃貸業界の繁忙期も終盤戦。無事にお部屋探しを終えた方もいれば、なかなか良い部屋が見つからず焦っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

前に別記事でも書きましたが、今年の繫忙期では物価高騰の波がいよいよ賃貸物件の家賃にも大きく影響した模様です。引っ越し代も高騰するなか、以前よりも住み替えのハードルは高くなったといえるのかもしれません。

 

そうした中だからこそ、思わず目を止めてしまうフレーズがあります。

「敷金・礼金ゼロ」。いわゆるゼロゼロ物件です。

ただでさえ、家賃や引っ越し代が高騰するなか、せめて初期費用の敷金・礼金だけでも抑えたいというのは自然な心理といえます。

しかし、ここで注意点があります。それは、ゼロゼロ物件は必ずしもお得ではないということです。それどころか、かえって割高な住み替えとなってしまったということもあるかもしれません。

 

本稿では、敷金・礼金の基本をおさらいしたうえで、ゼロゼロ物件の本質と注意点について、不動産や引っ越しに慣れていない方にも分かりやすい表現でご説明していきます。

 

■そもそも、敷金・礼金とは何なのか

 

まずは、そもそも敷金・礼金とは何なのか。この2つはどう違うのかについて、おさらいしておきましょう。

敷金・礼金に共通するのは、賃貸契約締結時に借主から貸主に支払う一時金のことです。実務上は、仲介手数料と合わせて仲介不動産会社に支払い、後日仲介不動産会社と貸主の間で精算する方法が一般的です。

 

但し、敷金と礼金では、その意味合いや位置づけが大きく異なります。

まず敷金。これは「貸主側のリスクに備える預り金」です。

たとえば、退去時に借主が負担すべき修繕があった場合、貸主はその全額を借主に請求するのではなく、まず敷金から充当して不足があった場合のみ、その不足額を借主に請求します。退去時に借主に十分な支払余力がなかったり、請求を無視したりするリスクを回避するためです。

あるいは、家賃滞納が発生した場合、敷金から未払い家賃に充当することもあります。

逆に言えば、入居期間中に家賃滞納等がなく、退去時にも借主が負担すべき修繕がなかった場合には、原則として敷金は全額借主に返却されます。

敷金はあくまでも、借主の“預り金”でしかないのです。

その一方、礼金は事情が異なります。

礼金の起源には諸説ありますが、「部屋を貸してもらう謝礼が起源」との説が有力です。今の常識では信じられないかもしれませんが、かつては大家さんの立場が強く、「部屋を借りてもらう」ではなく「部屋を貸してあげる」という時代があり、その名残りというわけです。

そうした経緯で商慣習化されたお金ですから、敷金とは異なり、礼金は基本的には返還されない。このように理解しておくとよいでしょう。

 

■なぜ「ゼロゼロ」にできるのか。大家側の事情を読み解く

 

それではなぜ、敷金・礼金をどちらもゼロ(無料)にできてしまうのでしょうか?

なかには、ボランティア精神による出血大サービスもあるかもしれませんが、物価高騰や金利上昇に苦労しているのは大家側も同じです。ご厚意でゼロゼロにしてくれているケースは多くはないでしょう。

 

結論をいえば、ゼロゼロ物件の多くは“見せ方の工夫”である可能性が高いといえます。

かつては、東京近郊の敷金・礼金といえば「敷・礼2、2」という条件も珍しくありませんでした。入居時に仲介手数料や引っ越し代とは別に、4ヵ月分もの初期費用が必要だったわけです。住み替えしたくともできない方も、実際に多くいたことでしょう。

こうした市場において、ゼロゼロ物件はどう映るでしょうか。競合の賃貸物件に優位に立てるだけでなく、住み替えを諦めていた層も見込み客として扱えるようになることは容易に想像できるところでしょう。

 

そして、ここからが重要なポイントですが、ゼロゼロ物件は必ずしも大家側の利益を削って集客しているケースばかりではありません。

たとえば、本来は礼金として設定するはずの利益を毎月の家賃に按分して転嫁する。あるいは敷金でリスクヘッジができない代わりに、入居者費用負担での保証会社加入を必須化したり、短期解約違約金を設定したりする。こうした方法により、大家側が極端に利益を減らさないようバランスされています。

近年は契約書に「クリーニング代」を取り決めるケースが増えていますが、これも敷金を代替する性質があるとみることが自然でしょう。

 

■ゼロゼロ物件は本当に得なのか――「総額」と「物件の人気度」を冷静に見る

 

では、ゼロゼロ物件は結局のところ得なのでしょうか。

結論からいえば、「ゼロゼロだから得」とも「ゼロゼロだから損」とも言い切れません。見るべきは「総額」と「条件」です。

 

まず確認したいのは、月々の家賃や共益費が周辺相場より高く設定されていないかという点です。敷金・礼金がゼロでも、家賃に数千円でも転嫁されていれば、長く住むほど“初期費用で得した分”が相殺されることになります。

逆に短期で住み替える場合でも、短期解約違約金によってやはり相殺されてしまうことがあります。

次に、退去時負担の条件です。短期解約違約金やクリーニング代等の特約の負担が重すぎる内容となっていないかは、しっかり確認しておくべきです。

もっとも、前述のとおり、大家側としてもゼロゼロ物件で初期費用を抑えた分は、どこかで回収しなければ事業として継続できません。「家賃への転嫁や特約は一切認めない」というスタンスではなく、「初期費用を抑えた対価として許容範囲か」という考え方で確認するとよいでしょう。

 

そしてもう一つ、その物件自体の魅力・人気についても、冷静に判断する必要があります。

一般論として、人気物件であればゼロゼロを提示しなくても入居者は決まるため、ゼロゼロは“条件で勝負しないと決まりにくい物件”で採用されやすい傾向があります。

もちろん、自分自身が納得していれば何ら問題はありませんが、仕様・設備が古いものだったり、住んでみて分かる不便があったりするケースもあるため、契約前に不明点はどんどん仲介不動産屋に質問するようにしましょう。

もちろん、ゼロゼロ物件だからと必要以上に警戒する必要はありませんが、こうした“背景”を踏まえたうえで条件を確認する意識を持つだけで、失敗や後悔の確率は大きく下げられるはずです。

 

いかがでしょうか。

 

ゼロゼロ物件は、初期費用の負担が小さいため、お部屋探しでは有力な選択肢の一つです。しかし、中長期目線での支払総額や契約条件、あるいは物件自体の魅力や人気を踏まえると、必ずしもお得でないケースも少なくありません。

本稿が納得のいくお部屋探しの一助になれれば幸いです。

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