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最低賃金を千円に引き上げ!?物価高騰の救世主となるか!?

最低賃金を千円に引き上げ!?物価高騰の救世主となるか!?

最低賃金を千円に引き上げ!?物価高騰の救世主となるか!?

先日、岸田首相が、経済界・労働団体の代表者と意見交換する「政労使会議」をおよそ8年ぶりに開催し、最低賃金の全国加重平均について、2023年に1,000円へ上げる目標を示したことが大きく報道されました。

最低賃金とは、最低賃金法に基づく労働市場のセーフティー・ネットの一つで、事業者(雇用主)が労働者に対して最低限支払わなければならない賃金の下限額のこと。

都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」がありますが、今回のテーマは前者のようです。

最低賃金は、最低賃金法第三条にて「時間によつて定めるものとする」と規定されており、実務上は毎年10月頃に地域別の最低賃金(最低賃金時間額)が発表されています。

厚生労働省のデータ(※)によると、2022年の全国加重平均額は961円。

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(※)厚生労働省ホームページ 『令和4年度地域別最低賃金改定状況』
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参考まで、2019年は同901円、2020年は同902円、2021年は同930円でしたので、今回示された引き上げ幅は過去のそれと比べても大きく、それなりにチャレンジングな目標ではあります。

ところが、こうした最低賃金の引き上げに対しては、早くも「目くらましだ」「効果は限定的だ」といった声が少なからず上がっているようです。

いかにも歓迎されそうな目標なのに、なぜ批判の声が出ているのでしょうか。

本稿では、最低賃金の引き上げに関する問題点(批判の要因)について、分かりやすくご説明していきます。

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■最低賃金の引き上げは「年収の壁」と相性が悪い!

最低賃金の引き上げに関して、「年収の壁」を理由とした批判が多くあります。

日本の税制・社会保険制度においては、ある年収額を超えると実際の手取り年収が減ってしまう分岐点があり、これを「年収の壁」と呼んでいます。

詳しくは別記事でご説明していますので、よろしければご参照ください。

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<参考記事>
『改めて知っておきたい、税制改正後の5つの「年収の壁」について』
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年収の壁には、大きく「100万円の壁」「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」の5つがあります。

特に、パート主婦(主夫)の方には、「103万円の壁」「130万円の壁」が有名ですが、たとえば年間給与収入額が129万円の方と131万の方であれば、社会保険料が引かれない分、129万円の方が手取りの年収額は多くなるケースもあるため(実際には様々な控除や特例・条件を加味して計算します)、年末近くになるとシフトを減らすなどして、年間給与収入額を調整する方が多いわけです。

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こうした方にとっては最低賃金が少々上がったところで、年間の給与収入額が増えるわけではありません。

具体例を挙げると、「時給961円・月110時間労働」の場合、年間給与収入額は約127万円(961円×110時間×12ヵ月)です。

仮に、目標どおり時給が1,000円に引き上げられた場合、年間給与収入額は132万円(1,000円×110時間×12ヵ月)となり、「130万円の壁」をわずかに越えることで逆に手取りの年収額は減ってしまう可能性があります。

そのため、現実的にはこれまで以上にシフトを調整するケースが多いとみられ、最低賃金の引き上げ効果は「若干の労働時間短縮」でしかなく、手取り年収を引き上げる効果はあまり期待できないと批判されているわけです。

 

■求められているのは、“体感”できる賃上げではあるけれど・・・

では、最低賃金の引き上げをきっかけに、「年収の壁」のマイナス影響を越えて収入が大幅に増やせるかといえば、これも難しいと言わざるを得ません。

目標が達成されたとしても、最低賃金の引き上げ幅は前年比で39円、先ほどの具体例で計算すると、年間5万円程度の効果に過ぎないからです。

仮に「年収の壁」の影響を受けない方であっても、昨今の物価高騰の一部を吸収するのがやっと、「年収の壁」の影響を受ける方であれば物価高騰をまったく吸収できないわけですから、体感的な生活の厳しさは増すばかりといえます。

著者は、ここに最低賃金の引き上げに対する批判の本質が集約されていると考えており、求められているのは名目的な賃金引上げではなく、日常生活で体感できる生活の余裕だと思うのです。

とはいえ、“言うは易く行うは難し”であることは間違いありません。

昨今の物価高騰は、ディマンドプル(需要拡大)によるものでなく、コストプッシュ(生産コスト上昇)によるもので、せっかく値上げを行っても、労働者はおろか、多くの事業者(雇用者)の利益すら増やせていません。

この状況において、政府が事業者に体感できるレベルの賃上げを求めたとしても、それに応じることが出来る企業は少ないはずです。

敢えていえば、「何もしないよりはマシ」「これが今できる精一杯」というのが、政府および経済界・労働団体の本音なのかもしれません。

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しかし、実効性のある賃上げは“待ったなし”の状況です。

要因がどうであれ、今年も物価高騰は続くとみられていますし、秋には実質的な消費増税にあたるインボイス制度の開始も控えています。(消費税分を商品・サービス価格へ転嫁する動きが活発化する可能性が十分にあります)

最低賃金の1000円への引き上げには一定の評価が出来ますが、政府には、より実効性のある政策を並行して実施してもらいたいところですね。

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