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受験予備校の常識が変わった――“授業を受ける場所”から“学びを設計する機能”へ

受験予備校の常識が変わった――“授業を受ける場所”から“学びを設計する機能”へ

受験予備校の常識が変わった――“授業を受ける場所”から“学びを設計する機能”へ

先日、国立大学の二次試験を含め、今シーズンの受験がひと段落しました。受験生だった方はもとより、そのご家族の方も含め、そのご負担は相当なものだったと推察します。心より、お疲れさまでした。

 

さて、受験シーズンが一段落したいま、昨今の受験事情、とりわけ『予備校』の位置づけを改めて振り返ると、かつての“常識”はずいぶん様変わりしたと感じるかもしれません。

かつて受験準備といえば、週末や学校のあとにターミナル駅近くの大手予備校へ通い、授業を受けて自習室にこもる――このスタイルが王道でした。もちろん今もこの形は健在です。

しかし一方で、授業はスマホで受け、学習は市販教材をベースに進捗管理で回す、といった新しいスタイルも珍しくなくなってきました。

また、大学受験に対する“選択肢”が増えた分、受験生自身や家庭事情に即した合理的・効率的な選択ができるかどうかも、合否に影響しやすくなっているともいえます。

 

本稿では、特定の予備校の良し悪しは論じません。受験予備校がどのように変化し、いま何が選択の軸になりつつあるのかについて、冷静に整理していきたいと思います。

 

■かつての王道型予備校は、いまもなお強い

 

最初に誤解のないよう強調したいのは、昔ながらの王道型、すなわち通塾を前提とする予備校はいまも健在だということです。なくなったわけでも、著しく衰退したわけでもありません。むしろ、「結局、王道型が強い」と感じるご家庭や受験生も多いはずです。

 

王道型の予備校では、膨大な過去実績に基づく合理的なカリキュラムが整備されています。学年や科目ごとに、あるいは志望校や現在の成績に応じて年間計画が組まれ、授業だけでなく、模試や面談・進路指導までを含めたトータルパッケージを提供してくれます。自習室という物理的な環境があることで、学習習慣が定着しやすい点や、同質集団の中で規律が生まれやすい点も見逃せません。

 

そして何より、王道型の大手予備校には長い実績があります。母集団が大きく、データも蓄積され、教材の精度も上がっていく。ここは新興勢力にはない、明確な強みといえるでしょう。

少なくとも、かつての王道型予備校が「古いからダメ」ということではありません。いまでも“有力な選択肢の一つ”であることは疑いのないところです。

 

■新トレンドは「授業の解体」と「講師のメディア化」

 

一方で、ここ数年の変化ははっきりしています。大きく言えば、授業が校舎から切り離され、別の形で流通するようになりました。

 

象徴的なのが、予備校講師の“メディア化”です。

講師自身が動画で発信し、授業がサブスク型で提供され、書籍やアプリにも展開される。授業コンテンツが「駅前の校舎」ではなく、「スマホの中」に入ってくる。ここが、かつてとの決定的な違いです。

 

もう一つの潮流は、いわゆる“授業をしない”タイプの学習管理型です。

インプットは市販の参考書や動画で済ませ、塾側は進捗管理・確認テスト・習慣化に価値を置く。教えるよりも「やらせ切る」。これは通塾型の対極に見えますが、発想としては合理的です。受験で苦しいのは、理解よりも継続だった、という人も少なくないからです。

ここまで来ると、予備校の価値は「授業」から「伴走(コーチング)」へ移っているとも言えます。校舎が提供していたものが、授業だけではなく、管理・環境・進路戦略・メンタルの安定だったとしたら、それを別の形で提供するプレイヤーが出てきた、ということです。

 

さらに、価格の設計も変わりました。

かつては通塾=まとまった費用、という印象が強かった。しかしいまは、サブスク、単科、買い切り、コーチング課金など、支払い方も細分化しています。利用者側は“部分最適”を取りやすくなった一方で、比較の難易度も上がりました。ここが、新しい受験の難しさでもあります。

 

■選択肢が増えた時代は「情報の扱い方」が受験に波及する

 

冒頭にも書いたとおり、本稿では「どのスタイルが良いのか?」を論じるつもりはありません。受験生本人やそのご家族の状況によって最適解は異なると考えるからです。

 

ただ、重要なのは“選択肢が増えた”という環境変化です。

たとえば地元に大手予備校が近くにない人や、通塾費用の家計負担が大きい人にとって、オンラインの意味は大きいでしょう。あるいは、教えられるより自分で回す方が伸びるタイプなら、管理型の方が合うこともあるでしょう。はたまた、仲間と一緒に頑張ることで実力を出せるタイプなら、王道型の予備校で友人やライバルと切磋琢磨する環境こそが、成績を引き上げる鍵となるかもしれません。

 

その一方で、選択肢が増えたことは、受験を“情報戦”に寄せる面もあります。

さまざまな選択肢が用意されたことで、それを使いこなすスキルの巧拙が成績アップに影響しやすくなります。受験の合否が純粋な成績・学力だけではなく、情報を使いこなすスキルによっても左右されやすくなっている――そう言っても過言ではないでしょう。

そして、昨今の推薦入試や総合型選抜の拡大が、これに拍車をかけることになります。大学受験そのものが、「学力を測るもの」から「学力だけでなく、情報活用のスキルも含めて問われるもの」へ、時代が移りつつあるのかもしれません。

 

いかがでしょうか。

 

受験予備校は衰退しているというより、再編が起きているのだと思います。授業コンテンツが安く、広く流通する時代に、予備校や塾の価値は「授業を提供する場所」から、「時間の使い方を整える機能」へと移りつつある。そう考えると、今の変化は自然です。

 

受験は、努力量だけでなく、設計の質で差がつきやすい局面に入っています。その意味で、周囲の評判や流行に引っ張られ過ぎず、自分の条件に合う型を選ぶ――その視点が、これからは以前にも増して重要になるのではないでしょうか。

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