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サラリーマンの繁忙期に潜む罠!春の残業は“損”って本当!?

サラリーマンの繁忙期に潜む罠!春の残業は“損”って本当!?

サラリーマンの繁忙期に潜む罠!春の残業は“損”って本当!?

3月、そして4月といえば、サラリーマンの繁忙期と言われています。
3月決算とする企業が多いことから、3月には目標の追い込みや決算の数字精査などがピークを迎えますし、4月に入れば新年度の体制変更や人事異動に伴う挨拶周り、そして新入社員の迎い入れといったイベントが続きます。

不本意ながらも、毎年この時期には残業時間が長くなりがちというサラリーマンの方は多いのではないでしょうか。

ところで、実はサラリーマンのような給与所得者にとって、春先のこの時期に残業を多くしてしまうと、手取り年収ベースで“損”をしてしまうことはご存じでしょうか?
もちろん、サービス残業扱いになって「残業代が出ない」という違法行為による理由ではなく、しっかりと残業代が支払われたうえでのお話しです。

本来、残業をすればその分だけ年収アップに繋がることは当たり前ですし、ましてや手取り年収に損が生じるなど、初めて聞く方は驚かれるかもしれません。

しかし、残念ながら日本のルールでは、実際に春先に残業を多くすることで、手取り年収が下がってしまうケースは往々にして起こりえてしまう現実があるのです。
本稿では、なぜこんなおかしなことが起こるのか、そのカラクリについて分かりやすくご説明していきます。

■給与支給額と手取り年収の関係

このカラクリをご理解いただくため、まずは「給与支給額」と「手取り年収」の関係から、簡単におさらいしておきましょう。

日常会話でも、「あの会社(職業)の平均年収は●●万円だ」といったように「年収」という言葉をよく見かけますよね。
こうした場合の「年収」は、「年間の給与支給額」を意図して用いられることが一般的です。

ところが、サラリーマンの手元に入るお金(実際に振り込まれる給与)は、給与支給額よりも大きく減っているはずです。
企業が実際に振り込む金額は、毎月の給与支給額に対する税金(所得税・住民税)や社会保険料(厚生年金・健康保険・雇用保険など)などが控除されているためです。(いわゆる「天引き」と呼ばれるものですね)

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●「年間給与支給額」-「控除額」=「手取り年収」

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サラリーマンの方であれば、企業から発行される毎月の給与明細を見ると分かりやすいかもしれません。

企業ごとに書式や内容は異なりますが、少なくとも「支給額」「控除額」「差引支給額」の3つの項目はあるはずです。

「支給額」には、基本給や役職手当などの諸手当などの内訳と合計が記されており、一般に残業代もこの欄に記されます。

「控除額」には、前述したような「天引き」の項目が記されているはずです。(他に企業独自で天引きしているものがあれば、別の内訳として表示されています)
そして、「差引支給額」に記された金額が「手取り月収」で、これを1年分合計したものが「手取り年収」というイメージで考えていただければOKです。

■税金と社会保険料の天引きルールの違い

では、春先に多くの残業をすることが、「給与支給額」と「手取り年収」にどのように影響するのかを見ていきましょう。
まず、残業時間に対する残業代は、翌月の給与と合わせて支給するケースが一般的です。(残業時間の集計を月末締めで行う企業が多いため)

つまり、3月・4月に集中して多くの残業をすると、4月・5月の給与支給額が偏って増えることになります。
では、4月・5月の給与支給額が偏って増えると、どうなるでしょうか。

給与支給額が増えれば、当然ながら控除額(税金・社会保険料)も上がりますので、4月・5月の手取り年収は、増えた給与支給額から増えた控除額を差し引いた金額となります。
ここまではよいのですが、問題なのは6月以降の控除額です。税金と社会保険料で仕組みが異なるため、順番に見ていきましょう。

●税金(所得税・住民税)

税金は、あくまで「年間給与支給額」を前提に税額を決定する仕組みのため、年内のどこかの時期に給与支給額が偏ったとしても納税額には影響しません。(正確に言えば、月次の納税額に過不足が生じることはありますが、確定申告や年末調整によって後から正しい金額に補正されます)

●社会保険料

社会保険料の算定根拠となる標準報酬月額は、「毎年4月~6月の平均給与支給額」を用いる仕組みとなっており(これを「定時決定」といいます)、決定した社会保険料は、原則として当年9月~翌年8月まで適用されることとなります。

そのため、4月~6月の給与支給額(3月~5月の残業代を含む)が偏って増えることで、その後一年間に渡って必要以上に高い社会保険料を支払うことになりかねません。
これが「春先の残業は“損”」とされる正体です。

■春の残業は本当に損なのか!?

では、春先の残業は、本当に“損”なのでしょうか?
人によって判断が分かれる部分もあるのですが、判断ポイントとなるのは、以下の2点です。

①随時改定

②社会保険の活用有無

①について、定時決定により決まった標準報酬月額がその他の月の給与支給額に照らして極端に高い(2等級以上)など一定の要件を満たす場合、標準報酬月額を見直す制度があります。(これを随時改定といいます)
社会保険料を過剰に支払うことになった場合でも、それが極端な負担にはならないよう配慮はなされているということですね。

②について、社会保険料を多く支払うことにはメリットもあります。
たしかに、健康保険の「療養の給付(病気やけがの際のいわゆる3割負担)」など、社会保険料の金額によらず給付内容が固定のものもありますが、たとえば厚生年金保険料は、将来の年金額に反映される仕組みとなっています。

他に、「障害年金」「遺族年金」「傷病手当金」「出産手当金(健康保険)」「育児休業給付(雇用保険)」「求職者給付(雇用保険)」なども、支払った保険料に応じて受給額・給付額が変わってくるため、こうした制度を利用するのであれば、一概に“損”とは言い切れない面もあります。

いかがでしたでしょうか。

定時決定については、「よりによって春先の4月~6月にしなくても・・・」という恨み節はよく聞くところではありますが、仕組みを知ることから対策は始まります。
「前倒しできる業務」「後ろ倒しにできる業務」がある方は、残業代を少しでも手元に多く残すことを、是非意識されてはいかがでしょうか。

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