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不動産関連のコラムなどでは、『持ち家 VS 賃貸』は、不動の関心を集めるテーマの一つです。
場面によっては明確に優劣を結論づけられていることもありますが、私個人の見解としては、個々人の価値観・状況などによって答えは変わり、万人に共通する結論は出せないと考えています。
絶対的にどちらが正しいということではなく、ご自身にとってどちらが合っているかのヒントを得るためのテーマと言ってもよいかもしれません。
一般的には、「金銭的な損得」「内装設備・転居における自由度」あたりがポイントに挙げられるようですが、大家さんを長年やっていると、それだけではちょっと危ないのでは?と不安に感じることもあります。
そこで、本稿では、前半で一般的な「持ち家vs賃貸」のポイントをおさらいし、後半では私が特に注意すべきと考えるポイントについて補足しながら説明していきたいと思います。
では、一般によく言われている、持ち家派のメリット・デメリットをおさらいしておきましょう。
細かい点まで含めれば多岐に渡りますが、ここでは主要なポイントのみ列挙させていただきます。
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<持ち家派のメリット>
・一般にグレードの高い内装や設備が使用されており、リフォームも可能
・住宅ローン完済後、住居費負担が大幅に軽減される
・資産性があり、売却により纏まった現金を得ることができる
<持ち家派のデメリット>
・内装や設備の修繕やリフォームコストがかかる
・毎年、固定資産税、都市計画税がかかる
・売却の時期や金額の条件によっては、転居に制約が生じる
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つづいて、一般的な賃貸派のメリット・デメリットもおさらいしておきましょう。
基本的には持ち家派と反対の関係になっています。
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<賃貸派のメリット>
・内装や設備の修繕やリフォームコストがかからない
・毎年の固定資産税、都市計画税がかからない
・転居の制約が小さい
<賃貸派のデメリット>
・一般に内装や設備のグレードは持ち家よりも低く、リフォームにも制限あり
・居住する期間は常に住居費負担が発生する
・資産性がない
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このように、一般的に「持ち家vs賃貸」のメリット・デメリットを比較する際の論点としては、
①金銭的な損得
②内装設備・転居における自由度
に集約されることが多いようです。(突き詰めれば、「②内装設備・転居における自由度」も金銭の問題に帰結することもあるでしょうが)
この場合、
・自宅にどこまでの利便性や満足感、あるいは拘りを求めるのか
・金利や借入期間など住宅ローンの条件はどうなっているか(住宅ローン減税などの措置を含む)
・転居の頻度や緊急性が高いのか
・不動産売買で資産拡大できるスキルやテクニックを持っているのか
といった評価軸に対して〇×評価を並べてみるなり、数値化できる要素は生涯ベースの金額を計算して比較してみることで、個々人にとってある程度合理性のある損得評価は可能かもしれません。
基本的には、私もこの評価方法に異論はありません。
しかし、長年不動産投資家として大家業をやっていると、是非ともこれに追加して考えるべきポイントがあると感じています。
それは、「現役世代と年金受給世代(高齢者)のギャップ」です。
賃貸派のメリットの一つである「内装設備・転居の制約が小さい」ことに関しては、加齢とともにどんどんその効果は失われてしまいます。
大家さんの立場で考えてみてください。
仮に、同じ条件で30歳の現役会社員の方と、70歳の年金生活の方がいたとしましょう。
大家さんとしては、どちらに優先して部屋を借りてほしいと思うでしょうか?
おそらく殆どの場合、30歳の現役会社員の方が選ばれるはずです。
理由は大きく2つです。
一般に、現役世代と年金受給世代では、現役世代の方が、可処分所得は大きいとされています。
家賃の絶対額が同じであれば、可処分所得の大きい方の方が滞納や未払いになるリスクが小さいと判断されやすいというわけです。
もう1つ。
こちらの方が影響は大きいかもしれませんが、高齢者の方に部屋をお貸しするとなれば、大家さんとしてはどうしても健康状態が気になるものです。
健康な高齢者の方もいらっしゃることは百も承知ですが、高齢者の入居に積極的になれない大家さんは少なくない現実は知っておく必要があります。
以下は、少し古いデータですが、国土交通省が調査した、「高齢者の入居に対する大家さんの意識」です。
この調査では、約6割の大家さんが高齢者の方の入居に抵抗感を持っているとされています。
【高齢者の入居に対する大家さんの意識】
【出典元】https://www.mlit.go.jp/common/001153371.pdf
もちろん、高齢者の入居に積極的な大家さんもたくさんいらっしゃいますし、UR賃貸などでは高齢者向け賃貸住宅の扱いもあります。
しかし、少なくとも現役世代のときと同じように、豊富な賃貸物件から選り取り見取りの選択を続けられるわけではない可能性は認識しておくべきでしょう。
では、賃貸派の方はどうすればよいのでしょうか。
一つの選択肢として、住宅ローンが借りられるうちに持ち家を購入する方法はあるでしょう。
一般に住宅ローンの完済年齢の上限は80歳前後に設定されていますので、たとえば35年の返済期間から逆算して45歳前後を目安に、持ち家派に乗り換えてしまうやり方です。
若いうちは賃貸派ならでのメリットを享受しつつ、老後を見据えて持ち家派のメリットも狙うというわけです。
あるいは、生涯賃貸派を目指すのであれば、やはり計画的に「現金」を残しておくことが基本にして最大の対策になります。
大家さんの健康不安はどうにもなりませんが、十分な「現金」があれば、少なくとも先ほどご説明した可処分所得のビハインド(給料>年金)を跳ね返せる可能性があります。
いずれにせよ、個々人の価値観や状況は、年齢や家族構成と合わせて変化していくものです。
『持ち家 VS 賃貸』のテーマに関しては、ある時点で結論を出したとしても、それが未来永劫変わらないということではありませんので、柔軟に、そして計画的に考えていくべきかと思います。
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